研究課題/領域番号 |
21K20411
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
小林 祐生 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 助教 (20909767)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | ポリマーナノコンポジット / 自己集合 / ナノ粒子 / 粗視化分子シミュレーション |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,粗視化分子シミュレーションを用いて,様々な添加剤がポリマーナノコンポジットの性質に与える影響を検討し,ポリマーナノコンポジット材料における力学特性の支配因子を特定を目指すことである.さらに明らかとなったメカニズムを基に,ヤヌス粒子を用いた相分離構造制御を行い,既存の材料では観察されない機械特性を有する材料を探索する.その目的に対し,初年度は,プログラムの作成およびシステムの構築を行った.まずプログラムの開発として,これまでの研究において粗視化分子シミュレーションの基本的なプログラムは開発済みであったため,それらをポリマーナノコンポジット系に拡張した.具体的には,ホモポリマーまたはブロックコポリマーで構成されるポリマーマトリックスに,ナノ粒子を添加した.このプログラムを用い,まず平衡状態での自己集合構造を調べた.検討パラメータは,ナノ粒子表面の化学的性質(ホモまたはJanus(異なる化学的性質の表面を伏せ持つ)),体積分率とした.調査の結果,粒子のデザインや粒子体積分率に応じて,様々な自己集合構造が現れた.さらに非平衡シミュレーションにも取り組んだ.具体的には一軸引張シミュレーションを実施した.現在は,平衡シミュレーションで得られた様々な自己集合構造に対して引張シミュレーションを行うことで,ガラス転移温度以上に設定された温度域での,自己集合構造と物性の関係性を調査している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していたプログラム開発・拡張とシミュレーションモデルの作成は順調に進めることができている.さらにそれらを用いた計算の妥当性もおおよそ完了している.また,粗視化分子動力学シミュレーションは、ミシガン大学が開発したオープンソースソフトウェア「HOOMD-blue」を GPU上で行った.GPUで計算が可能になったために,当初の想定よりも計算時間も削減できている.機械特性に関しては,本研究の目的達成につながる結果がすでに出始めているため,おおむね順調に進展しているとした.
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題はおおむね順調に進展しているため,これまでと大きくは変わらず研究を推進していく予定である.具体的には,科研費補助金で購入した計算機およびGPUを用い,非平衡シミュレーションを進めていく. 前年度に作成したプログラムを元に,より多くの検討パラメータを振り,どの因子が機械特性の挙動に影響するのかを明らかにする.得られた研究成果は,投稿論文や学会発表によって公表する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
まず,新型コロナウイルスの影響で参加予定の学会が延期となったため,旅費を使用しなかった.また,英文校正に関しては,他の助成金を得ることができたため,残額が生じた. 次年度も同様に計算機を購入予定であり,本計算を行いながらの解析も行っていく.また,新たな結果が得られる年度であるため,研究課題に関する議論や情報収集のための学会発表や研究相談に使用を考えている.
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