本研究の目的は、遊星式スピンコーターによる新たな高粘度スラリー材料の薄膜成形・粒子制御技術の確立である。そのために、実際に高粘度スラリーを用いた製膜実験を行い、遊星式スピンコートの効果と最適な加工条件を確認した。 初年度はアルミナスラリーを用いた実験により、従来のスピンコートに比べ表面うねりを4%にまで抑えることが可能な遊星式スピンコーターの開発に成功した。 最終年度は開発できた遊星式スピンコーターを使用して輝度ムラが低減された大面積無機ELの開発に取り組んだ。チタン酸バリウム粉末を誘電体層、硫化亜鉛系蛍光粉末を発光層とした分散型無機ELの各機能層を遊星式スピンコートによって作製することで膜厚のムラを低減し、均一な発光輝度を得ることが可能となる。研究の結果、従来のスピンコート法で作製した場合に比べ、遊星式スピンコートでは発光面上の輝度の標準偏差が約半分となり、目標である輝度ムラの抑制を達成することが可能となった。本結果は、遊星式スピンコートにより膜厚のムラが減少したことに加え、製膜後の粉末の分散も向上しており、それが輝度ムラの低減につながったと考えられる。 本研究成果により、遊星式スピンコートによる製膜は多様な材料に利用することが可能であり、様々な製品の高性能化に寄与することができると考えられる。 遊星式スピンコートの開発の成果は外部からも評価されており、国際学会にて1件の発表を行ったほか、招待講演を2件行っている。また、本研究の成果を元に特許を1件出願することができた。
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