研究課題
近年、ダイヤモンド中の窒素―空孔(NV)中心が、量子光源や量子メモリー、量子センサーなど幅広い量子技術の観点から大変注目を集めている。NV中心とは、ダイヤモンド格子中の炭素の置換位置に入った窒素と、それに隣接する炭素原子が抜けてできた空孔からなる不純物欠陥であるが、室温下における優れたスピンコヒーレンス特性を有し、光によるスピンへのアクセスが可能なため、磁場や温度、圧力といった様々な物理量の高感度量子センサーとしての応用が期待されている。特に集団のNV中心を利用するダイヤモンド量子センサーは、理論上、超伝導量子干渉素子といった従来型の磁気センサーに匹敵する磁気感度が室温で到達可能であることから、次世代の高性能磁気センサーとして盛んに研究が進められている。しかし、これまでに報告されてきた集団NV中心に基づく磁気検出の感度は高々pT/√Hz程度での実証に留まっており、従来型の量子センサーに比べて数桁も性能が劣っているのが現状であった。したがって、ダイヤモンド量子センサーの実用化に向けて、磁気検出感度の向上が至上命題であった。同課題の解決には、ダイヤモンドからの光取り出し効率を大幅に向上させることが重要となる。そこで本研究では、高感度な磁気検出が可能なダイヤモンド量子センサーの実現に向けて、NV中心からの高効率な発光取り出しを可能にする新奇デバイス構造を、転写プリント法を活用することで、窒化シリコンからなるグレーティング構造をダイヤモンドNV基板上に集積し、世界に先駆けて実現することを目指す。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件)
Applied Physics Letters
巻: 121 ページ: 161103~161103
10.1063/5.0107854