本研究で用いたフラーレン誘導体をアクセプターとして用いた有機光電変換素子は、高照度の屋外光より低照度の屋内光を照射した方が高い光電変換効率が得られる。この現象は身の回りで一般的に使われているSi系光電変換素子では観察できない独特な現象であり、様々な屋内環境の光照度要件を考慮すると屋外光より低い光照度下における屋内型有機光電変換素子の変換効率の向上は望ましい結果であるが、その根本的な原因は明らかではない。これらの原因を解明するため疑似太陽光・屋内光を用いて光電変換素子の定量的な測定・評価できるシステムを構築し、さらに分光放射照度に対する量子収率の変化を調べるために必要な単色光レーザーパルス変調システムを構築した。これらの測定システムを用いて1. 屋内型有機光電変換素子の入射光源のスペクトル及び放射照度依存性を参照Si光電変換素子と比較しての調査した結果、入射光の放射照度が下がると共に変換効率が上昇する結果が得られた。続いて2. 屋内型有機光電変換素子に単色光レーザーパルス変調システムを用いて入射光源の波長・強度・照射パルス時間変調(励起子濃度の制御)に対する電気的挙動解析を行った結果、低い入射照度(低励起子濃度)において分光量子収率が上昇傾向を示し、高いエネルギーを持つ短波長光において理論値100 %を超える分光量子収率が得られた。これらの結果は、低照度において理論値を超える高い分光量子収率(励起子分裂)およびその上昇傾向(励起子対消滅の抑制)は高い光電流を素子へ齎し、屋外光より低照度の屋内光源下でより高い光電変換効率が得られることを示唆している。そして有機光電変換素子内部のこれらの励起子相互作用を制御することで居間の低照度(200 lx)において21.1 %の高い光電変換効率を有する素子作成に成功した。本研究で得られた結果を元に論文化作業を進めている。
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