研究課題
スピントルク発振素子(STO)は直流電流を通電することにより数GHzから数10 GHzの周波数での磁化発振が生じるナノサイズのスピントロニクスデバイスである。STOには様々な応用が期待されているが、ナノサイズの磁性体における高速な磁化ダイナミクスを解析し、制御することは困難であり、実用化への障壁となっている。本研究では、STOの計測技術開発、材料開発を行った。〇評価手法:all-in-plane型STOに外部からマイクロ波磁界を印加した際のinkection lockinを用いたSTOの評価手法を構築し、inkection lockingに伴う抵抗変化をとらえることに成功した。これにより、従来の手法では困難だった、磁化発振の周波数の同定が可能になった。磁化発振周波数はデバイス応用上非常に重要なパラメータであり、本評価手法を用いることで応用への研究が進むことが期待される。〇材料開発:さらに、スピントルクによって生じる磁化反転を検出することでスピントルク効率を見積もる測定手法を提案した。この新規手法を、STOの新規構造において注目されている負のスピン分極を有するFeCrを用いた。FeCrから得られた磁気抵抗比は、代表的な正のスピン分極を有するNiFeと比較して1/10程度と非常に小さかったが、STT効率はNiFeに対して1/2程度であった。この結果はSTT効率はMR比からだけでは正確に見積もることができないことを示しており。提案した測定手法の有効性を示している。本研究で行った、STOの計測技術開発、材料開発はSTOの実用化に向けて重要な一歩となるものである。
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