本研究では次世代太陽電池として注目されている軽量フレキシブルなペロブスカイト太陽電池の成膜工程における結晶核成長制御を可能とする成膜・乾燥手法を確立し、大面積で高性能なペロブスカイト太陽電池を開発している。従来、研究室レベルでは□30mm程度の基板を用いた小面積な太陽電池をスピンコーティング法によりペロブスカイト太陽電池の開発を行っていた。近年量産化に向けて国内外で機運が高まっているが、従来のスピンコーティング法では大面積化することが困難で製造タクトタイムを早くすることもできずコストがかかることが問題である。また、生産安定性を高めるためにどのような雰囲気で連続的な作製をしていくべきか学術的に明らかになっていない。本研究では量産応用可能な塗布法であるブレードコーティング法を用い、新規乾燥技術下での結晶成長メカニズムとデバイス耐久性との関係性について明らかにしていく。2022年度は装置の改善とペロブスカイト膜の製膜条件を探索した。近年、スピンコーティング法で広く用いられているペロブスカイト膜であるCs0.05(FA0.89MA0.11)0.95Pb(I0.89Br0.11)3のように様々なカチオンとハロゲンが混ぜ合わさった材料系に対しても本研究のブレードコーティング法と新規乾燥技術下を組み合わせて用いることにより4m/minといった比較的速い成膜速度で製膜できることを確認した。また本研究手法で製膜したCs0.05(FA0.89MA0.11)0.95Pb(I0.89Br0.11)3膜は、従来のスピンコート法と同等な太陽電池性能を発現させることができ、□4mmの小面積セルで20.7%、□10mmで16.3%を達成した。
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