研究課題/領域番号 |
21K20436
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
村田 博雅 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 研究員 (10909576)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | 多層グラフェン / 結晶成長 / フレキシブルデバイス |
研究実績の概要 |
多層グラフェンは優れた機械的強度および電気的特性を有することから、フレキシブルデバイスへの応用が期待されている。現在、多層グラフェンのフレキシブルデバイス応用に向けて、層交換法による形状制御した多層グラフェンの合成を目標として研究を推進している。本年度は、(1)成膜装置や熱処理装置の立ち上げ、および、(2)非晶質炭素膜の特性が層交換合成した多層グラフェンに与える影響の解明に取り組んだ。 (1)本年度より着任したグループにおいて、試料を製膜および熱処理できる環境を整備した。一方で、新たに整備した装置を用いて多層グラフェンの層交換合成を検討したところ、多層グラフェンの層交換合成の再現性、および、多層グラフェンの膜質に一部問題が発生した。予期せぬ問題であったが、初期の非晶質炭素の特性に着目し物理的な要因を解明することで、再現性および膜質を改善することに成功した。さらに、原因調査の過程において、層交換法における重要な知見(2)を得た。 (2)層交換法は非晶質炭素層と金属層の位置が交換すると同時に多層グラフェンが合成されるユニークな手法であるが、非晶質炭素層の特性が合成される多層グラフェンに与える影響は明らかとなっていなかった。本年度の研究により、層交換を発現する最低温度も非晶質炭素の諸特性に強く依存することが判った。また、ラマン分光法を用いて多層グラフェンの結晶性の評価を行い、非晶質炭素の諸特性を制御することで多層グラフェンの結晶性を向上できることを見出した。以上のように、層交換のさらなる低温・短時間化および多層グラフェンの結晶性向上が期待できる重要な知見が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、新たに整備した装置を用いて多層グラフェンの層交換合成を検討した。その際に予期せぬ問題も生じたが、非晶質炭素の諸特性に注目し試行錯誤を重ね、最終的には問題を解決することができた。この過程で、多層グラフェンの層交換合成における重要な知見を見出すことができ、当初計画にはない進展が得られた。現在、本成果をまとめた論文を投稿準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまで薄膜で実証されてきた多層グラフェンの層交換技術をデバイスに組み込むべく、多層グラフェンの構造制御を検討する。本年度に得られた知見を活かしつつ、微細加工技術により層交換多層グラフェンの構造制御を実施するとともに、デバイスの作製および特性評価を行う。
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