研究課題
本研究は, ①津波シミュレーション技術,②教師なし学習(固有直交分解),③ベイズ理論に基づく最尤シナリオ推定という3つの要素技術によって,信頼性と即時性の両方を兼ね備えた,新しいリアルタイム津波予測技術を開発することを目的とする.最終年度となる2022年度は,前年度にプロトタイプを完成させたリアルタイム津波予測技術の有用性検証を兼ねたデモンストレーションを南海トラフ地震による津波リスクが懸念されている高知市沿岸部を対象として行った.一連の結果から,同定された最尤シナリオを基に,沿岸部の最大波高や,波高の時刻歴データの合理的な予測が可能であると例証された. これらの結果を,査読付き国際誌へ国際共著・オープンアクセス論文として公開することができた.また沿岸地域の浸水深分布や第一波到達時刻など,警報・予報により実用的と思われる情報の予測にも取り組み,この成果について国内誌(査読有)で発表した.一方,津波シナリオデータベース内に類似したシナリオが存在しなかった場合,予測精度が低下する傾向が確認されたことから,「最尤シナリオ同定型」ではなく,確率の高いシナリオ群の合理的な重みづけ平均値として予測を提示する手法へと拡張することも行った.また,当初計画以上の進捗状況から,固有直交分解の対象となる学習データを「沖合・沿岸部の波浪観測による波高データ」ではなく,「人工衛星によって観測される地盤変動データ(GNSSデータ)」に代替して津波リスクを予測する,という新たな研究着想を得ることができた.これについて,基礎的な検討を行った後,国内・国際会議で発表を行った.
すべて 2022 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
日本計算工学会論文集
巻: 2022 ページ: 20220003
10.11421/jsces.2022.20220003
Journal of Geophysical Research: Oceans
巻: 127(10) ページ: e2021JC018324
10.1029/2021JC018324