研究実施計画に記載された事項について、都市圏交通シミュレーションにおけるEコマースモデルの構築に向けた最終年度の実績は以下の通りである。①物流施設立地選択:昨年度までに構築したデータベースと立地選択モデルに基づき、物流施設の立地が交通影響に与える影響について都市貨物シミュレーションを用いたシナリオ分析を行った。物流土地利用の在り方に関する関心が世界的に高まる中、本分析から得られた知見の意義は大きい。②物品配送の最終発送施設の選択:現実のラストマイル施設に関するデータ収集を行い、それぞれの施設と世帯・事業所との空間的な関係について分析を行い、配送目的地の配送センターへの割り当てをモデル化した。③配達計画:オンライン調査を設計・実施し、Eコマース世帯需要に関するデータを収集した。収集したデータを用いてEコマース世帯需要モデルを開発し、昨年度までに構築・実装した東京都市圏を対象とした都市貨物の配達計画のシミュレーションモデルに組み込んだ。このEコマース世帯需要モデルでは、革新的なモデル手法を用いており、現実のデータを用いて実装をした意義は大きい。また、ラストマイル施設もシミュレーションモデルに組み込み、シミュレーションによってEコマース物品配送を評価できるようにした。④施設間貨物輸送:既に昨年度にシミュレーションモデルを実装済みであるが、都市間交通について一層精度の高い分析ができるようにモデルを追加開発し、動作検証を行った。 以上の作業を通して、Eコマースに関連した交通影響を評価するためのシミュレーション環境が構築できた。Eコマース市場が急拡大する中、Eコマースの物品配送の交通影響に関する懸念やEコマース物品配送に対応する新たなサービスや規制に対する関心が高まっているが、このシミュレーションモデルを用いて、Eコマースを含む都市貨物の交通影響について明らかにすることができた。
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