本年度は昨年度に引き続き,将来気候における予測に加えて,観測データを用いて過去の事例に対しても解析を行うことで,梅雨期の集中豪雨(以下,線状対流系)のメカニズム解明を目指した. 観測データである解析雨量を用いて過去の線状対流系事例のデータベース作成及び解析を行った.過去の線状対流系を(A)前線による大規模な収束によって発生する線状対流系,(B)前線から孤立して発生する局所的な線状対流系に分類して発生環境場の解析を行った結果,(B)の局所的で自己組織性の強い線状対流系においてバルク・リチャードソン数(浮力と乱流の比)がより重要であることが明らかになった. また,近畿地方で発生する線状対流系に対して,水蒸気が輸送されるプロセスに着目して擬似温暖化実験を行った結果,水蒸気の輸送過程には水蒸気量そのものに加えて,地球温暖化で変化するとされている大気の安定度も影響を与えることを明らかにした.過去の観測情報からも,大気の安定度が内陸への水蒸気輸送に重要であることも示した.
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