研究課題/領域番号 |
21K20452
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研究機関 | 創価大学 |
研究代表者 |
関根 睦実 創価大学, 理工学部, 助教 (60910388)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | 微細藻類 / 細胞内pH / アンモニウム / 廃水 / 遊離アンモニア阻害 |
研究実績の概要 |
廃水中の栄養塩の除去と有価物生産を同時に達成するため、アンモニウム含有排水の微細藻類の培地としての利活用が期待されている。しかしアンモニウムと共在する遊離アンモニアによる微細藻類の強い阻害が課題である。細胞内pHが高い微細藻類は、遊離アンモニア阻害を受けにくいことが示唆されている。そこで本申請研究では、まず、培地の塩濃度・無機炭素濃度を変えることで微細藻類の細胞内pHの上昇と遊離アンモニア耐性の向上を試み、得られた高い遊離アンモニア耐性を持つ藻類を用いて、廃水の無希釈処理および微細藻類生産の達成を目指す。 2021年度は、Chlorella sorokiniana NIES 2173株を対象として、培養pH、塩分、無機炭素濃度が細胞内pHに与える影響を調査した。試験管を用いて異なる培地環境下で対象種を継代培養した後、蛍光pH指示薬BCECFを用いて細胞内pHを測定した。その結果、pH7.0~9.0、塩分0.04~1.36%(塩化ナトリウム0~200 mM)の範囲において細胞内pHに変化は見られなかった。一方で、無機炭素濃度を0 mMから100 mMに上げた条件では、細胞内pHが8.1から8.4に有意に増加し、高い無機炭素濃度で細胞内pHが上昇する可能性が示された。しかしながら、無機炭素濃度100 mMではC. sorokinianaの増殖が遅く継代培養を続けられず、廃水処理への利用は困難であると考えられた。無機炭素濃度の増加に伴う細胞内pH上昇が他種でも生じるのか否かを検証するため、至適無機炭素濃度が比較的広範囲なArthrospira platensis NIES-39株についても110~230 mMの範囲で無機炭素濃度と細胞内pHの関係を評価したところ、何れの無機炭素濃度においても細胞内pHに違いは見られず、種によって応答が異なる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画では、塩分濃度や無機炭素濃度を変えることにより微細藻類の細胞内pHを上げることができ、これにより微細藻類の遊離アンモニア耐性が向上することを想定していた。しかしながら、塩分では細胞内pHは変化しなかった。また、高濃度の無機炭素濃度下で細胞内pHの上昇が確認されたが、藻類が無機炭素濃度による阻害を受け十分な増殖を維持できなかった。そのため、その後の試験に移ることができていない。
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今後の研究の推進方策 |
微細藻類の増殖速度を維持しつつ細胞内pHを上昇できる環境パラメータが容易に見つからないことが明らかとなったため、今後はその検討と並行し、アンモニウム含有廃水処理の高効率化に向け、もとから細胞内pHが高い微細藻類を探索する。これまでにArthrospira platensisが高い細胞内pHと高い遊離アンモニア耐性を有することが明らかになっているが、本種は好アルカリ種である。至適pH10では、全アンモニウム態窒素中の約85%が遊離アンモニアとして存在するため、低アンモニウム濃度下であっても容易に遊離アンモニア阻害を受け、無希釈廃水での培養は困難である。そのため、既往研究に基づき至適pHが中性である微細藻類(10種以上)を収集し、その中から細胞内pHが高い種を選択し、当初目標としていたアンモニウム含有廃水処理への利用を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度明らかにする予定であった微細藻類の増殖速度を維持しつつ細胞内pHを上昇できる環境パラメータの特定に時間を要し、続く微細藻類の遊離アンモニア耐性試験の実施に進むことができなかったため、試験を次年度に移し、係る費用も次年度に使用することとした。
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