研究課題/領域番号 |
21K20458
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
戸塚 真里奈 千葉大学, 大学院工学研究院, 助教 (60893774)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | 木質構造 / 引きボルト / めり込み / 接合部 / 割裂 / 縦圧縮 / 木質ラーメン |
研究実績の概要 |
木質構造を中大規模建物に用いると,今まで想定されていなかった変形や破壊が生じることがある。実際に,申請者が予備試験として行った大型の引きボルト接合部の引張実験では,これまで想定されていなかった繊維方向の圧縮変形及び割裂破壊モードが見られた。 本研究は,中大規模木質構造の柱脚に有用な引きボルト式接合部の変形・破壊のメカニズムを解明し,評価法を提案することを目的とする。その際,申請者が研究してきた繊維方向に圧縮される木質材料のメカニズムと,力学と確率の組み合わせによる加工のばらつきを考慮した剛性・耐力の評価法を応用する。 本研究により,仕様ごとの実験を行うことなく手計算で引きボルト式柱脚接合部の剛性・耐力を予測できるようになり,木質構造を中大規模建物に採用しやすくなる。また,引きボルト式接合部は柱脚だけでなく,柱梁接合部や梁の継手としてもつかわれる。提案する柱脚の評価法は鉛直荷重をゼロとすれば柱梁接合部や梁の継手に応用できる。さらに,力学と確率の組み合わせによる加工のばらつきを考慮した引きボルト式柱脚接合部の性能評価が可能であることを示せれば,同様の手法を他の接合部や建物全体にも応用できると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
昨年度は引きボルト接合部の引張試験をもとに引きボルト式接合部の変形・破壊メカニズムの問題点の整理,初期剛性評価法の考案をメインに行った。さらに,引きボルト式接合部の水平加力試験を行った。 「1. 引きボルト接合部の引張試験をもとに引きボルト式接合部の変形・破壊メカニズムの問題点の整理」スギ集成材を用いて引きボルト接合部の単調引張試験を行い,変形を構成する要素の検討,破壊モードとその影響因子を検討した。 「2. 初期剛性評価法の考案」上記の検討をもとに変形を構成する要素が「座金下の木材のせん断変形」「座金直下の木材の圧縮変形」「ボルトの引張変形」であることを解明した。さらに,現状では評価法が存在しない座金直下の木材の圧縮変形について新たな評価法を提案し,引きボルト接合部全体の引張剛性の評価法を提案した。実験結果と提案する剛性評価法による計算値を比較し,提案式が実験値をうまく評価出来ていることを確認した。 「3. 引きボルト式接合部の水平加力試験」 実際に建物の柱脚に引きボルト式接合部が用いられる場合,地震力に対する評価をする必要がある。引きボルト式接合部の水平加力試験を数体行い,破壊モードや初期剛性について検討した。これらの検討は本年度にメインに行う予定であり,その事前検討である。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の成果を踏まえ、本年度は次に述べる二つの検討課題に対応する。 一つ目は上記で述べた「3.引きボルト式接合部の水平加力試験」を中心に破壊モードや剛性の検討を行う。また,地震力を受ける引きボルト式接合部の変形・破壊の評価法について検討する。 二つ目は「引きボルト式接合部の変形・破壊メカニズムの問題点の整理」で明確になった割裂破壊に関する検討である。引きボルト式接合部の割裂破壊は発生条件や影響因子などほとんどのことが未解明であり,どのような接合部仕様で生じうるかを予測できない。そこで,本年度は引きボルト式接合部の割裂破壊の影響因子を実験的に検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響により集成材の納品が遅れたため試験の一部を次年度に持ち越した。
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