木材は繊維方向に比して繊維直角方向の弾性係数・強度が1/10~1/20も低いという異方性を示すため,住宅などの低層建築では繊維方向の変形や破壊に着目されていなかった。一方,中高層木質構造では接合部の高耐力化やコンクリート等の異種材料とのハイブリッド化により,接合部が繊維方向に圧縮され今まで想定されていなかっ破壊が生じるようになった。 そこで本研究では、中高層木質構造でよく用いられる接合部の一つである引きボルト式接合部に着目した。結果,引きボルト式接合部はすでに知られているボルトの降伏,座金下木材の圧縮降伏,木材のせん断破壊,木材の曲げ破壊のほかに割裂破壊が生じることが分かった。割裂破壊は脆性的な破壊で最大耐力後に荷重がゼロまで低下する危険な破壊であった。さらに割裂破壊の原因は木口面付近のボルト周りの応力集中であることが分かった。 割裂破壊の評価手法として破壊力学を用いた手法を提案し実験値を概ね評価出来るとこを確認した。また,割裂破壊は木質構造用ねじを木材の断面を横断するように打つことで防止できることを示した。
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