研究課題/領域番号 |
21K20466
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
伯耆原 智世 早稲田大学, 理工学術院, 専任講師 (70908061)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | 木質構造 / 火災 / 3時間耐火 / 耐火構造 / 高層化 |
研究実績の概要 |
大規模・中高層木造は、脱素化や森林資源活用の観点から、近年、世界的に注目されているが、木材は高層化によって高度な耐火性能が要求される。従来の設計手法では、2、3時間と要求耐火時間が長くなるほど、被覆層を厚くすることで耐火性能を担保する部材設計が一般的であり、その部材開発は、試行錯誤的に行われている。木材は他の構造部材と比較して可燃物であるため、被覆層が肥大化することは、可燃物を増やすことになるため、構造的な面のほか、防耐火上不利になりかねない。 そこで、本研究では材積最小化に向けて、3時間耐火性能を確保する燃え止まり型木質耐火構造部材の断面構成の把握を目的として、燃えしろ層をスギ、燃え止まり層を難燃処理スギとして構成された、小型試験体の3時間耐火加熱実験を行った。3時間耐火性能を確保できるラミナの積層方向及び燃えしろ層・燃え止まり層厚さを把握し、断面構成の見通しを得た。 また、火災継続時間が長い場合は構造部材が長時間の加熱を受け、部材深部で木材の熱分解温度域(180~350℃)で長時間推移することから、その温度変化は力学的性能に影響すると考えられる。そこで、部材深部の荷重支持部における木材の熱分解と吸発熱性状についてスギ・カラマツ小型試験体を用いて加熱試験を行い、熱分解温度帯程度の加熱が部材内部の昇温に与える影響を把握した。 以上より、高層耐火木造における材積最小化に向けて、実大断面を模した小型試験体を用いた断面構成及び木質構造部材の熱分解温度帯での昇温性状の把握を行い、15階建て以上の建築物を建築可能な3時間耐火性能を有する木質耐火構造部材の実現に見通しを立てた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2021年度では、当初から予定していた通り燃えしろ層及び燃え止まり層の被覆層を対象として、小型試験の実施を中心に材積効率化を進めた。更に、これに加えて2022年度に予定している荷重支持部への長時間加熱が力学的・防耐火性能が及ぼす影響を把握する準備実験として、部材深部の荷重支持部における木材の熱分解と吸発熱性状を小型実験で把握を進めた。
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今後の研究の推進方策 |
高層建築を木造で成立するには、必要な耐火性能の高度化とそれに伴って肥大化する部材断面寸法の制御の両立が必要である。そこで2021年度は燃えしろ及び燃え止まり層の被覆層に注目してその材積最小化を目指して断面構成を把握した。 高層建築は、長時間の火災継続時間に曝される可能性があり長時間の耐火性能が要求される。被覆層だけでなく、木材深部の荷重支持部も木材の熱分解温度域程度で長時間推移することから、その温度変化は力学的性能に影響すると考えられる。 そこで2022年度は荷重支持部への長時間加熱が力学的・防耐火性能に及ぼす影響を把握するために、小型一面加熱試験及び実大梁試験を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度に予定していた小型耐火加熱試験では、想定よりも少ない試験体数で、想定した被覆層の性能と厚さの関係を把握することができたことから、それら支出予定を翌2022年度の小型耐火加熱試験及び実大試験体製作費に充てることで、被覆層に加えて荷重支持部も含めた検討把握に資する予定である。
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