本申請研究では,環境騒音による睡眠影響に関しての曝露-反応関係の構築に必要とされる,大規模かつ客観的な睡眠データの取得方法の確立を目的としている.近年,スマートウォッチ等のウェアラブルデバイスでの普及が進んでいる光電式容積脈波記録(以降,PPGデバイスとよぶ)やポータブル心電計を用いた環境騒音による睡眠影響の評価手法を検討する.本申請研究は以下の2項目に取り組むものであり,2021年度は1)を,2022年度は1)および2)を実施した. 1) PPGデバイス等を応用した睡眠影響評価の可能性の検討(実験室実験+フィールド実験) 2) PPGデバイス等を用いたフィールド調査の実践(フィールドでのケーススタディ) 1)について,睡眠治療のクリニックにいびき治療で通院する18名の患者を対象として実験を行った.実験期間は2021年10月から11月および2022年10月である.睡眠ポリグラフ検査(PSG)を行っている実験参加者の体に,PPG及びポータブル心電計を同時に装着して一晩寝てもらい,それぞれのデバイスで推定した睡眠ステージと,PSGの結果とを比較した.その結果,PPGとPSGの結果は中程度の一致を示した(重み付きカッパ係数で約0.5).また,ポータブル心電計で得られた心拍変動の解析値で行った機械学習での推計値はPSGと非常によく一致していることを示した(重み付きカッパ係数で約0.8). 2)では,嘉手納飛行場の周辺に居住する29名を対象として,PPDデバイスを装着した生活をしてもらい,1か月間の睡眠段階のデータを取得した.調査時期は2023年2月~3月であり,嘉手納町役場より,同時期における夜間の航空機騒音の発生イベントごとの騒音曝露量のデータ提供を受けた.今後,夜間に発生した騒音イベントのLAmax等の物理量と睡眠段階の変化に関する分析を実施し,曝露反応関係を構築する予定である.
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