研究課題/領域番号 |
21K20480
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
コ ソンジェ 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (90910282)
|
研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
|
キーワード | 水系電解液 / 高濃度電解液 / 還元安定性 / リチウムイオン電池 |
研究実績の概要 |
対称型Li塩 LiN(SOCF3)2と様々な非対称型Li塩 LiN(SOCF3)(SOC2F5),LiN(SOCF3)(SOC3F7),LiN(SOCF3)(SOC4F9)を用い、その共晶組成を探索することで、複数の新規常温溶融水和物(monohydrate melt)の合成に成功した。これら常温溶融水和物は、水分子間の水素結合が切れている独特な溶液構造を有していることから、有機系電解液に匹敵する5 V程度の広い電位窓を示した。特に、Al電極において、水素発生が高度に抑制されると同時にアニオン由来表面保護被膜による表面不働態化が進行し、Al-Liの合金化反応が水系電解液で実現できた。 一方、加水分解型Li塩 LiPO2F2は、有機系電解液の主塩であるLiPF6の加水分解中間生成物でありLiPF6より加水分解に強いと共に高溶解性を有するため、高濃度水系電解液の作製に適している。LiPO2F2を純水と特定有機溶媒(THFなど)の混合系に溶かすことで、加水分解が抑制され、長時間pH4-5を保つ新規水系電解液の開発に成功した。新規LiPO2F2水系電解液はLi3PO4やLiFのような水に溶けにくい表面保護被膜を形成させ、電解液と電極の物理的な接触を遮断してくれることから、リチウム基準1.5 Vで酸化還元を示すLi4Ti5O12負極の活用を可能にした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予想よりやや早いペースで様々な新規水系電解液の開発に成功した。また、それらの電解液の還元耐性が非常に優れていることが明らかになり、今まで活用できなかった低電位電極を用いた高電圧水系電池の開発が期待される。特に、また、今までイミード型塩(例えば、上記のLiN(SOCF3)2))に頼ってきた高濃度水系電解液において、加水分解型塩の適用が可能であることが明らかになったことより、更なる高性能水系電解液の開発が加速されると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
今回開発された非対称型Li塩、加水分解型Li塩をベースにした高濃度水系電解液を電解液とし、フルセルを作製することで、その電気化学的特性を詳細に調べる。特にこの段階においては、電解液の還元耐性に着目し、今まで到達したことのない低電位領域(リチウム基準1.5 V以下)における電極の可逆的酸化還元反応を可能にすることを目指す。この実験が成功すれば、数年間低迷していた水系電池の高電位化の重要なターニングポイントになると強く確信する。 また、加水分解型LiPO2F2塩が水溶液状態では数週間以内に加水分解される(pH1以下)に対し、特定有機溶媒(THFなど)との混合系では、その加水分解が抑制される(pH4以上を維持)メカニズムを詳細に調べる。この段階においてはシミュレーションによる理論計算を含み、実験と理論の両側からメカニズムの提案ができるようにする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナより実験対応(試薬や分析機器の購入、納入など)が遅れています。
|