研究実績の概要 |
水の狭い熱力学的電位窓(1.2V)を克服し、高度な安全性と高エネルギー密度化の両立が可能な蓄電システムを実現するため、水の活量を極限まで減らした新しいカテゴリのイオン伝導性液体「常温溶融水和物」を開発した。具体的には、対称型Li塩と、様々な非対称型Li塩Liを用い、その共晶組成を探索することで、複数の新規リチウム常温溶融一水和物の合成に成功した。また、Na系に対してもその探索範囲を広げ、二つの非対称型Na塩をベースにした新規ナトリウム常温溶融二水和物の合成に成功した。これら常温溶融水和物は、水分子間の水素結合が切れている独特な溶液構造を有していることから、3Vの広い電位窓を提供した。一方、加水分解型Li塩 LiPO2F2については、純水と特定有機溶媒(DMSO、THF、Diglyme、1,4-Dioxaneなど)の混合系に溶かすことで、加水分解を長時間抑制することに成功した。また、LiPO2F2/Sulfolane/H2O系においては、Li3PO4のように水に溶けにくい、水と反応しないことに加え高いLi+イオン電導性を示す表面保護被膜の形成が確認された。これによって、リチウム基準1.5 Vで酸化還元を示すLi4Ti5O12負極の可逆的な動作が可能になった。
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