研究課題/領域番号 |
21K20482
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
相原 健司 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 研究員 (00909583)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | ペロブスカイト / 酸 / 塩基 / XAFS / シアノシリル化 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、ペロブスカイト型複合酸化物の合成・構造に起因した酸塩基性質の制御・有機合成反応への適用、を目的としている。本年度は、ペロブスカイト型複合酸化物としてチタン(Ti)を含むペロブスカイト(ATiO3、Aはアルカリ金属)に着目し、各種Tiペロブスカイト合成法の検討を行った。リンゴ酸を用いたゾル-ゲル法で合成することにより、AサイトとしてMg・Ca・Sr・Baを含む複合酸化物が得られることを見出した。なお本合成法では、攪拌・蒸発乾固・焼成と非常に簡便なステップで目的の複合酸化物を合成可能であった。得られた複合酸化物には、炭酸塩や単純な酸化物などの不純物相が含まれず、非常に純度の高い目的の複合酸化物が得られた。各種キャラクタリゼーションの結果から、いずれの複合酸化物もナノサイズの粒子であり、高い比表面積を有することが明らかとなった。 得られた複合酸化物を触媒として用い、C-C結合形成反応の一つであり、酸・塩基反応として知られるカルボニル化合物のシアノシリル化を検討した。検討した複合酸化物の中でもSrTiO3触媒は0 ℃という非常に温和な条件で本反応を効率的に進行させ、α-アミノ酸・α-ヒドロキシカルボン酸・β-アミノアルコールなどの合成における重要な中間体の一つであるシアノヒドリンシリルエーテルを高収率で与えた。本SrTiO3触媒は一般的な酸・塩基触媒として知られるTiO2・Al2O3・Nb2O5・CeO2などの酸化物触媒よりも著しく高い活性を示した。さらに、本触媒は反応後に分離・回収が容易であり、触媒活性の低下無く複数回の使用が可能であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在のところ、ターゲットの材料としているTiペロブスカイトにおいて、非常に簡便かつ高い表面積を持つ材料を合成する手法を確立した。得られた材料を各種分析手法を用いキャラクタリゼーションし、構造を解明した。さらに、主にターゲット反応としているC-C結合形成反応であるカルボニル化合物のシアノシリル化において、既存の報告の活性を上回る触媒の開発に成功している。そのため、おおむね順調に進行していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
現在、Tiペロブスカイトの合成法の確立・構造の解明・シアノシリル化反応の活性評価を行った。来年度以降は、BサイトとしてTi以外のd0遷移金属イオンを含むペロブスカイト型酸化物の合成(AZrO3やANbO3など)の合成にも着手し、リンゴ酸を用いたゾル-ゲル法の有用性を拡大していく予定である。また、これまでの検討において合成に成功したTiペロブスカイトについて、放射光施設を用いたXAFS測定や、プローブ分子を用いた吸着IR実験を行い、構造と酸・塩基性質をより詳細に検討していく。さらに、現在のターゲット反応であるシアノシリル化以外にも、クネーフェナーゲル縮合やCO2の固定化反応などを検討し、ペロブスカイト材料の触媒性能評価ならびに有用性を示していく。
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