研究実績の概要 |
酸化物イオン伝導体は、固体酸化物形燃料電池SOFC、酸素分離膜およびガスセンサーなどに幅広く応用できる材料である。CsBi2Ti2NbO10-δは、Dion-Jacobson 相として世界初の酸化物イオン伝導体であり、Dion-Jacobson 相が酸化物イオン伝導体として有望な構造ファミリーであることも示した。 2021年度にCsBi2Ti2NbO10-δの3価のBiの一部を2価のアルカリ土類金属(Mg, Ca, Sr, Ba)で置換した固溶体CsBi2-xMxTiNbO10-x/2 (M =Mg, Ca, Sr, Ba; x = 0.1, 0.2)を合成し、結晶構造、電気的性質、イオン拡散経路などを調べた。そこで、 実際に固溶体を固相反応法で合成し、X線粉末データを用いて、構造解析を行った。直流伝導度測定と交流インピーダンス測定により、ドーピングにより酸化物イオン伝導度を向上させることに成功した。10%Srドーピングした組成は一番高い伝導度を示した。電気伝導度は酸素分圧に依存しないので、酸化物イオン伝導が強く示唆された。結合原子価法により、酸化物イオンの拡散経路も示唆された。更に、伝導度向上の理由を、イオンサイズ、キャリア濃度などの観点から説明できた。この成果はレフリーから高く評価され、Ceram. Int.に掲載された。また,研究を実施した大学院生がセラミックス協会年会で優秀ポスター発表賞(優秀賞)を受賞した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2021年度はBiのサイトに2価のアルカリ土類金属(Mg, Ca, Sr, Ba)を一部ドーピングした固溶体を中心に探索した。そこで、新材料CsBi2-xMxTiNbO10-x/2 (M =Mg, Ca, Sr, Ba; x = 0.1, 0.2) に選択して、新規物質合成・電気物性評価・結晶構造解析という3つの視点で研究を進められた。CsBi2-xMxTiNbO10-x/2 (M =Mg, Ca, Sr, Ba; x = 0.1, 0.2)の中でCsBi1.9Sr0.1Ti2NbO9.9の電気伝導度が最も高いことがわかった。CsBi1.9Sr0.1Ti2NbO9.9の電気伝導度は酸素分圧に依らず一定である酸素分圧の領域が存在し,酸化物イオンが支配的な伝導キャリアであることが分かった。以上の成果は国際学術誌Ceram. Int.に出版された。また,研究を実施した大学院生がセラミックス協会年会で優秀ポスター発表賞(優秀賞)を受賞した。 以上の理由より、本研究課題は当初の計画以上に進展しているといえる。
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