研究課題/領域番号 |
21K20486
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
西田 吉秀 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10908924)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | ニトリル / 水素化 / アミン / イミン / ナノ粒子 / 合金 / 触媒 / 選択性 |
研究実績の概要 |
含窒素化合物(アミンやイミン類)の環境調和型合成法としてニトリルの水素化が注目されている.本反応ではニトリルのシアノ基が逐次的に水素化され,1級アミンを原子効率100%で得ることができる.また,生成した1級アミンと反応中間体のin-situ縮合により一段で2級イミンや2級アミンを得ることも可能である.しかし,本反応ではこの化学的多様性に由来して目的生成物の選択的合成が難しい.本研究では反応選択性が触媒の構成元素に強く依存することに注目し,性質が異なる元素を混ぜ合わせた固溶ナノ合金触媒の金属配列や電子状態を制御することで,ニトリルの水素化において1級アミン,2級イミン,2級アミンの作り分けを可能とするスイッチング触媒の開発を目的とした.2021年度では,固溶ナノ合金触媒の調製難易度が高いことから,触媒調製パラメーターのスクリーニングを行い,得られたサンプルの構造評価を実施した.その結果,複数の合成条件を検討した場合においても当初計画していた液相法では目的とする固溶ナノ合金触媒を得ることができなかった.そこで触媒調製法を見直したところ,不均一系触媒の調製法として広く知られる含浸法の最適化により,目的とする固溶ナノ合金触媒が得られることをXAFS分析により確認した.等量合金化により得られたサンプルの触媒評価では,モノメタルと大きく異なるニトリル転化率および反応選択性が得られた.一方,固溶ナノ合金触媒では複数の生成物が検出されたことから,構成元素や金属組成のチューニングにより反応選択性を制御する必要がある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
固溶ナノ合金触媒の金属配列や電子状態の制御には,構成元素や金属組成に依存しない固溶ナノ合金触媒の調製法を確立する必要があると考えた.そこで,金属組成比を比較的固溶化が起きにくい1に固定し,液相法における触媒調製パラメーターのスクリーニングを実施した.しかしながら,得られたサンプルの構造評価では固溶体の形成を示唆する結果が得られず,触媒評価においてもモノメタルとの劇的な触媒性能差を確認することはできなかった.そこで触媒調製法を見直したところ,含浸法の最適化により仕込金属組成比1の条件においても固溶ナノ合金触媒が得られることをXAFS分析によって確認できた.得られたサンプルの触媒評価では,モノメタルの足し合わせでは説明できない非線形的な触媒性能が観察された.以上のことから,本研究は概ね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
仕込金属組成比1の条件においても固溶ナノ合金触媒が得られる調製法を確立し,非線形的な触媒性能を発現させることには成功したが,単一生成物の選択的合成やこれらのスイッチングを実現するには至っていない.そのため2022年度では,確立した触媒調製法により固溶ナノ合金触媒の構成元素と金属組成の最適化を各生成物に対して行う.また,得られたサンプルの構造をXAFSのみならず種々の手法により解析し,合金構造と反応選択性の関係を明らかにすることで,スイッチング機能の発現メカニズムを解明する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度に計画していた設備導入が実験環境の都合により行えなかったこと,またCOVID-19の影響により予定していた国際/国内会議へ参加できなかった(もしくはオンライン参加となった)ことにより,次年度使用額が生じた.これらの残額は,2022年度での設備導入費及び国際/国内会議への参加費として使用する予定である.
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