研究課題
超微細粒 (UFG) 金属は、平均結晶粒径1 um以下のミクロ組織を有するバルク多結晶金属材料であり、その多くは巨大ひずみ加工およびその後の短時間の焼鈍により作製されてきた。UFG金属は粗大粒径材に比べて数倍の高い降伏強度を示す一方で、引張延性、特に均一伸びが限られることが知られている。先行研究では、FCC構造を有するCoCrNi等原子量ミディアムエントロピー合金 (MEA) に対して巨大ひずみ加工の一種である高圧ねじり加工と焼鈍を施すことで,種々の平均結晶粒径の完全再結晶組織を有する試料を作製した。その中でも完全再結晶UFG組織を有するCoCrNi MEAは高い強度と大きな延性を両立した優れた力学特性を示すことが判明した。しかしながら、UFG組織を有するCoCrNi MEAがなぜ従来のUFG金属に比べて優れた力学特性を示すのか、その原因は未だ不明である。そこで本研究では、完全再結晶UFG組織を有するCoCrNi MEAに対し室温引張変形を施すことで発達する変形組織を系統的に調べることで、その優れた力学特性の起源を明らかにすることを研究目的とした。平均結晶粒径400 nmの完全再結晶組織を有する試料を作製し室温引張試験を行った。その結果、試料は先行研究と同様に優れた強度・延性バランスを示した。その引張変形組織を観察したところ、降伏点近傍では、幅広く拡張した積層欠陥やランダムに絡みあった転位が頻繁に観察された。その後は、同様な積層欠陥や転位の密度が上昇するとともに、幅数nmの微細な変形双晶が観察された。その後ひずみ量が増加するに従い、転位、積層欠陥および変形双晶の量が増大した。UFG組織を有するCoCrNi MEAでは、転位密度の上昇に加え、高密度に生成する面欠陥 (積層欠陥、変形双晶) が転位の運動を動的に阻害することで、高い加工硬化能が得られたと考えられる。
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