完全再結晶超微細粒 (UFG) 組織を有するCoCrNi MEAに対し室温引張変形を施すことで発達する変形組織を系統的に調べることで、その優れた力学特性の起源を明らかにすることを研究目的とした。平均結晶粒径400 nmの完全再結晶組織を有する試料を作製し室温引張試験を行った。降伏点近傍では、幅広く拡張した積層欠陥や絡みあった転位が頻繁に観察された。その後は、積層欠陥や転位の密度が上昇するとともに、微細な変形双晶が観察された。UFG組織を有するCoCrNi MEAでは、転位密度の上昇に加え、高密度に生成する面欠陥が転位の運動を動的に阻害することで、高い加工硬化能が得られたと考えられる。
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