研究課題/領域番号 |
21K20489
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
松川 祐子 九州大学, 工学研究院, 助教 (00910217)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | 熱電材料 / クラスレート / チョクラルスキー法 / Ba-Cu-Si / Ba-Cu-Ge / Ba-Au-Si |
研究実績の概要 |
n型クラスレートとして知られるBa8CuxSi46-xクラスレートについて、アーク溶融法により前駆体となる合金を得た上で、単結晶化手法であるチョクラルスキー法による引き上げを行った。この際、種々の仕込み組成で実験を行い、生成物の組成の制御を試みた。分析として、結晶構造、組成(元素比)、ゼーベック係数、比抵抗を主に調査した。 上記実験により、粒界の低減による低比抵抗化と、ゼーベック係数の調整が行えることを確かめた。得られた試料はすべてn型であり、パワーファクターは500 ℃で0.688 mW/K2 mであった。 p型クラスレートとして期待されるBa8CuxGe46-xクラスレートについても同様の実験を行った。サーマルプローブ法によって引き上げ試料のゼーベック係数のマッピングも行った。 Cuが過剰な仕込みの条件、および引き上げ時のCuの濃化を利用することで、p型の試料が得られた。他者の報告での多結晶試料と同程度のゼーベック係数、かつ半分程度の比抵抗を有する試料も得られ、結果的に500 ℃において約2倍のパワーファクターを示した。一部試料においては不純物が原因と見られる試料の分解が起きた。 Ba8AuxSi46-xクラスレートについては、内部電界による機能性向上について検証を行った。このためにチョクラルスキー法で組成を傾斜させることを利用した。 結晶成長方向に起電力を測定したところ、結晶成長方向に垂直な方向よりも起電力が向上しており、組成傾斜の効果を示唆する結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究開始時に掲げていた「機能性の面でモデルとなる材料の創出」について、チョクラルスキー法による試料作製によっておおむね達成できているから。 組成の観点では、Ba8CuxSi46-xあるいはBa8CuxGe46-xといったクラスレート材料を作製できており、各x値についても実験条件によってある程度制御可能なことを確かめられたから。
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今後の研究の推進方策 |
機能性の面でモデルとなる材料の創出として、引き続きBa8CuxGe46-xの低比抵抗化に取り組む。また特にこの試料については単結晶を得ることで、その物性の評価を推進する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入を予定していた物品で納品が遅れたため。今後執行予定である。
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