組成によってn型とp型の両方を作製可能である、Ba8CuxGe46-xクラスレート、およびこのGeを一部Siに置換したものについて、アーク溶融法により前駆体となる合金を得た上で、単結晶化手法であるチョクラルスキー法による引き上げを行った。この際、種々の仕込み組成で実験を行い、生成物の組成の制御を試みた。分析として、結晶構造、組成(元素比)、ゼーベック係数、比抵抗を主に調査した。これらの実験により、粒界の低減による低比抵抗化と、ゼーベック係数の調整が行えることを確かめた。試料の表面観察の結果からは、クラスレート以外の相が大気成分と反応することで不純物が生成し、試料の崩壊の原因になり得ることが示唆された。この他にもチョクラルスキー法によって、Sr-Ga-Si系クラスレートの作製を試みた。この時Al添加無しの試料はSiなどの不純物を多く含んでいた一方、Alを添加することでクラスレート単相を得ることができた。これらの熱電特性について、パワーファクターを比較すると、Al添加試料はAl添加無し試料の約12倍の値を示した。 n型となる仕込み組成でのBa8CuxGe46-x合金を、Snを添加した上で、スパークプラズマ焼結法により焼結体を作製した。その組成にはSnが含まれていた。Sn添加無しの試料と比べて密度が増大し、比抵抗は低下した。ゼーベック係数の温度依存性では、ピークが高温側にシフトしていた。これは、計算結果から、Snの添加によるバンド構造の変化によると示唆された。
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