シクロデキストリン系金属有機構造体(CD-MOF)は規則的に配列した細孔を有する多孔質ナノ孔結晶であり、吸着法や同時結晶化法によりナノ孔内に機能性分子を導入することができる。これまでに粒子径が1.7 nm以下の金ナノクラスターをCD-MOF内に担持することに成功した。そこで、合成した金ナノクラスターの抽出を試みたが、凝集し均一サイズで抽出することができなかった。そこで、一般的な金ナノクラスターの液相合成に凝集保護剤が用いられていることに着目した。本研究では、CD-MOFのナノ孔内に金ナノクラスターの凝集保護剤として4-メルカプト安息香酸を導入した後、金ナノクラスターを担持することでCD-MOFのナノ孔内で凝集保護剤を修飾した金ナノクラスターの合成を試みた。 合成した金ナノクラスターはCD-MOFに担持時および溶液抽出時で紫外可視分光法により測定を行い、粒子サイズが数nm程度から観測される表面吸収プラズモンによる吸収がなかったこと、MALDI-TOFMSより得られた金ナノクラスターの金原子の構成原子数から微小な金ナノクラスターを形成していることが示唆された。よって得られた金ナノクラスターは溶液に抽出時も凝集することなくCD-MOFへ担持された状態と同様に独立したナノクラスターとして存在していることが考えられる。また、蛍光分光法により金ナノクラスターの蛍光性を調査したところ、CD-MOFに担持した状態では弱い蛍光性を示したが、溶液抽出時は蛍光性を示さなかった。
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