研究実績の概要 |
中赤外光源の開発において6um以上の領域は分子の遷移が最も豊かであるため、特に重要とされている。しかし、この領域において広帯域に直接発振できるゲイン媒質はないため、近赤外からの波長変換に頼ることになる。本研究では将来の高速赤外吸収分光応用を見据えた広帯域中赤外光源の開発を目指すものである。当初の計画では、フーリエドメインモード同期レーザー(FDML)を用いる予定であった。だたし、掃引速度が数100kHz程度に制限され、また掃引のジッターが分光スペクトルの取得の際、悪影響を及ぼす可能性があった。したがって、本研究では、モード同期レーザーベースの光源開発にシフトした。 一般的なYbファイバーモード同期レーザーにシングルモードファイバー中でのスペクトル拡大と分散補償を行う独自のテクニックを加え、12 fs, 3.3 Wという他にあまり類を見ない光源を作製する事ができた。これを1 um帯から中赤外へ波長変換する際に最も有力な選択肢の一つであるOP-GaP(orientation-patterned Gallium phosphide)結晶に集光する事で、単一のパルス内で差周波を発生させ、mWレベルの広帯域な中赤外光(8-12 um)を得ることが出来た。これは1 um帯のファイバーベースでの広帯域差周波発生を世界で初めて実現した例であり、OPTICAのOptics Lettersに掲載された(T. Nakamura, et al., Opt. Lett. 47, 1790 (2022).)
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