研究課題/領域番号 |
21K20513
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
本田 雄士 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (90907742)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | 細胞内抗体 / エンドソーム脱出 / 高分子複合体 / ドラッグデリバリーシステム |
研究実績の概要 |
近年、細胞質内に局在する抗原やタンパク質と結合する細胞内抗体医薬は細胞死や免疫誘導できることから、新たな治療分子として注目されている。しかしながら、これら抗体の細胞質への移行量は極めて低く、十分な活性が発揮されず、医薬品としての利用が困難である。これらを解決する方法として、カチオン性のペプチドやポリマーを用いたエンドソーム脱出方法が報告されていた。しかしながら、カチオン分子由来の細胞毒性が誘起されてしまうことおよび、全身投与が困難という問題があった。そこで、全身投与が可能で抗体の活性を飛躍的に向上させ革新的な抗体医薬品を創出することを目指し、ナノテクノロジー技術を基盤とした新規薬物送達システムの構築を検討する。具体的には、細胞内抗体と相互作用し複合体を形成する上、エンドソーム脱出能を示す材料の構築を目指す。これまでに、合成した高分子Aと分子Bをモデル抗体と組み合わせることで抗体搭載複合体を形成し、細胞実験においてエンドソーム脱出能を向上させることを既に確認済みである。また、全身投与においても十分な腫瘍集積性および血中滞留性を示した。今後は、モデル抗体ではなく、生理活性を持つ細胞内抗体を用いて、活性およびエンドソーム脱出能のさらなる解析を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目標の達成に向け、2021年度では高分子Aの合成及び抗体搭載複合体の調製、機能性評価を行った。高分子は開環アニオン重合および側鎖修飾によって合成した。また、機能性評価では細胞実験によって抗体搭載複合体がエンドソームから細胞質に脱出する効率を向上させている傾向を得ることが出来た。さらに、動物実験によってこの抗体搭載複合体が全身投与可能であることを示すことに成功した。高分子Aの構造に関しては、最適化する余地は残っているものの概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に調製した抗体搭載複合体の構造物性およびエンドソーム脱出機能を更に詳細に検討および改善し、細胞や動物に対しての抗腫瘍効果へ展開する。現状、高分子Aの構造に関しては改善の余地があるため、エンドソーム脱出能および複合体の構造と合わせて、評価を実施する。また現状、モデル抗体を用いて評価を実施しているため、生理活性を持っている細胞内抗体を用いて抗腫瘍効果を評価する。さらに本抗体搭載複合体のエンドソーム脱出効果もより明確に証明するため、様々な観察手法およびコントロールの材料を用いて優位性を証明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
高分子Aの合成が予想より上手くいったため、余分な材料の購入をする必要がなかったため。また、高価である細胞内抗体の代わりにモデル抗体によって評価を行うことが出来たため。来年度、当初予定していた細胞内抗体を用いて評価を行うため、その購入資金として、次年度使用額に計上した。
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