研究課題/領域番号 |
21K20519
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研究機関 | 東北工業大学 |
研究代表者 |
松田 直穀 東北工業大学, 工学部, 助教 (80909490)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | 機械学習 / 脳・神経 / in vitro / 微小電極アレイ / 神経毒性 |
研究実績の概要 |
本研究は、全施設で統一して使用できる同期バースト発火検出AIを開発し、AIが判定した特徴量から同期バースト発火の定義づけ、同期発火の多様性を定量化することを目的としている。ヒトiPS細胞由来ニューロンの自発活動および痙攣陽性化合物を代表とする15薬剤の応答を取得し、得られたデータを用いて (ⅰ)各電極で得られた発火時系列データから算出したパラメータを用いて機械学習を行い、発火をグルーピングする発火時系列データ分類モデル、(ⅱ)同期バースト発火が観察されていない時刻の電圧値(正常電圧値)を学習した電圧値LSTMモデル、(ⅲ)ラスタープロット画像学習モデル、(ⅳ)ヒストグラム画像学習モデル、(ⅴ)周波数解析画像学習モデルの5種類の同期バースト検出AIの開発を行った。開発した各AIに対して、①研究者が検出した同期バーストの結果と近いか、②薬剤応答にも対応できるか、③サンプル間差の影響を受けないか、について検証した結果、薬剤応答による変化およびサンプル間差に対応可能なAIモデルを同定した。同定したモデルは研究者が判断した同期バースト数を99%以上、同期バースト区間を90%以上の精度で検出した。同定したAIを用いて、異なるiPS細胞のデータでの検証と同期バースト発火の定義付け、同期発火の多様性の定量化を次年度実施する。学会発表は、筆頭著者として国内学会1件発表した。以上より、初年度の研究は順調に進んでおり、期待通りの成果を挙げている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、①全施設で統一して使用できる同期バースト発火検出AIの開発、②AIが判定した特徴量から同期バースト発火の定義づけ、同期発火の多様性を定量化することを目的としている。初年度は、MEA上に培養したヒトiPS細胞由来ニューロンの自発活動および痙攣陽性化合物を代表とする15薬剤の応答を取得し、得られたデータを用いて2種類の教師なし学習モデルと3種類の教師あり学習モデルの同期バースト検出AIの開発を行った。 【教師なし学習モデル】(ⅰ)各電極で得られた発火時系列データから算出したパラメータを用いて機械学習を行い、発火をグルーピングする発火時系列データ分類モデルを開発した。(ⅱ)同期バースト発火が観察されていない時刻の電圧値(正常電圧値)を学習した電圧値LSTMモデルを作製し、異常電圧値(同期バースト)検出AIを開発した。 【教師あり学習モデルによるバースト検出AI】研究者が判断した同期バーストを教師データとして、(ⅲ)ラスタープロット画像学習モデル、(ⅳ)ヒストグラム画像学習モデル、(ⅴ) 周波数解析画像学習モデルの3モデルを開発した。 開発したバースト検出AIの予測精度は(ⅰ)発火時系列データ分類モデル:93.0%、(ⅱ)電圧値LSTMモデル:91.8%、(ⅲ)ラスタープロット画像学習モデル:91.9%、(ⅳ)ヒストグラム画像学習モデル:80.0%、(ⅴ) 周波数解析画像学習モデル:90.0%であった。このうち、(ⅰ)発火時系列データ分類モデルと(ⅲ)ラスタープロット画像学習モデルが、薬剤応答による同期バーストの変化に対応可能であり、サンプル間差にも対応可能だったのは(ⅲ)ラスタープロット画像学習モデルのみであったことから、特徴量を用いた同期バースト発火の定義づけ、および同期発火の多様性の定量に最適なモデルとして、ラスタープロット画像学習モデルを同定した。
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今後の研究の推進方策 |
同期バースト発火検出に最適なモデルを同定できたため、次年度は同定したAIを用いた異なるiPS細胞のデータでの検証の実施と、ラスタープロット画像を学習した同期バースト発火検出AIを用いて算出した画像の特徴量から、同期バースト発火検出を決定している特徴量を同定し、同期バースト発火の定義付けを行う。また、薬剤応答で変化する特徴量の同定を行う。同定した特徴量の種類と量は、同期バースト発火の多様性を定量化するものであり、薬剤応答の有効なパラメータとして期待できる。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスのため、参加予定の学会が中止またはオンライン開催となったため、計上していた旅費10万円が次年度使用額として生じた。物品購入費として使用する予定である。
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