本研究は、実験間差なく使用できる同期バースト発火検出AIの開発を目的としている。微小電極アレイ(MEA)上に培養したヒトiPS細胞由来ニューロンの自発活動および痙攣陽性化合物を代表とする15薬剤の応答を取得した。得られたデータを用いて(ⅰ)各電極の発火時系列パラメータを学習した発火時系列データ分類モデル、(ⅱ)同期バースト発火が観察されていない時刻の電圧値(正常電圧値)を学習した電圧値LSTMモデル、(ⅲ)ラスタープロット画像を学習したモデル、(ⅳ)発火数ヒストグラム画像を学習したモデル、(ⅴ)活動電位波形から算出した周波数スペクトル画像を学習したモデルの5種類の同期バースト検出AIの開発を行った。開発した5つのモデルに対して、①研究者が検出した同期バーストの結果と近いか、②薬剤応答にも対応できるか、③サンプル間差の影響を受けないか、について検証しデータ間差にも対応可能なモデルを同定した。同定したモデルは研究者が判断した同期バースト数を99%以上、同期バースト区間を90%以上の精度で検出した。最終年度では、学習させたデータとは異なるiPS細胞の自発活動および痙攣陽性化合物のデータを用いて、同定したバースト検出モデルの予測精度検証を実施した。その結果、未学習の細胞であっても、データ間差に対応可能なAIモデルであることが確かめられた。本研究で開発した機械学習を用いた同期バースト検出法は、MEAで取得した神経活動を実験間差なく評価できることが示された。
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