研究実績の概要 |
本研究では、三次元的な周期構造を持つ強等方性K4格子のトポロジーに起因した機能の開拓を目的として、酸化還元活性かつ優れた電気伝導性を示す分子骨格を導入した新規立体π共役分子の開発を目指した。最終年度において、いくつかの酸化還元活性な骨格を持つ立体π共役分子を設計し、新規立体π共役分子PDI-Δの合成に成功した。 これまでに開発された立体π共役分子は、電子受容性のナフタレンジイミド(NDI)骨格で構成されていた。このNDI-Δを用いて作製された分子性K4格子に対して、安定性向上や更なる内部空間の拡大を目指して、NDI骨格をペリレンビスイミド(PDI)骨格にπ拡張した類縁体の合成が過去に試みられていたが、原料のペリレン酸無水物の有機溶媒に対する難溶性から目的物は得られていなかった。研究代表者はこの問題の解決策として、溶媒をほとんど使用せず固体状態で反応を行うメカノケミカル合成に注目した。初期検討としてナフタレン酸無水物とシクロヘキサンジアミンの縮合反応(すなわちNDI-Δの合成)を固相中で行ったところ、期待通り目的化合物の合成に成功した。この結果に基づいて、ペリレン酸無水物とシクロヘキサンジアミンの縮合反応を固相中で行ったものの、同条件では目的化合物の存在は確認出来なかった。FT-IR, MALDI-TOF-MSの分析から、反応中間体の存在が示唆されたため、固相反応の途中で溶媒を添加して再度攪拌する、二段階の反応を検討した。その結果、目的生成物であるPDI-Δの存在がMALDI-TOF-MSにおいて示唆された。また、環状構造を持つPDI二量体、四量体の存在も合わせて示唆された。これらの成果は、日本化学会が主催する国内学会(春季年会2023)にて発表した。
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