研究課題/領域番号 |
21K20533
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大谷 俊介 京都大学, 工学研究科, 助教 (90911503)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | ホスト-ゲスト化学 / ケイ素 / 環状分子 |
研究実績の概要 |
すべての状態で同じ発光色を示す剛直な発光分子に対して、柔軟な発光分子は容易に構造変化を引き起こし、分子の集合状態に応じて発光色が切り替わる、環境応答性の発光を示す。一方、この柔軟な発光分子の歴史は浅く、その柔軟性に基づく機能性は単一の分子系で発現するものが大半であった。したがって、二種類以上の分子を組み合わせる、多成分系における柔軟な発光分子の機能性は未踏領域と言うことができる。本研究は、ホスト-ゲスト相互作用により分子を複合化し、柔軟な発光分子の多成分系分子として発現する新奇な機能性の解明を目指すものである。本年度は、柔軟な発光性ホスト分子を構築するために、ケイ素によって架橋された環状分子の合成検討を行った。まず、前駆体となるケイ素架橋二量体の合成検討を行い、良好な収率かつ大スケールでの合成に成功した。続いて、この二量体を用いて環化反応を検討することで、収率1%ながらケイ素で架橋された環状六量体が合成可能であることがわかった。また、同様にして、側鎖のアルキル鎖長が異なるケイ素架橋環状分子の合成にも成功した。さらに、得られた環状化合物の単結晶構造解析に成功しており、6枚のベンゼン環がケイ素原子によって架橋され、環状骨格を形成することが確認された。また、単結晶構造から、環骨格を形成するSi-C結合の結合長は、炭素原子のみで構成される環状分子のC-C結合よりも長く、より大きな環サイズを有することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、ヘテロ元素によって架橋された環状分子の合成及び単結晶構造解析に成功した。一方で、環サイズに適合したゲスト分子が見つかっておらず、検討課題である。ケイ素によって架橋された環状分子は、これまで報告されている炭素のみからなる類似する環状分子と比較し、大きな環サイズを有していることが明らかになっており、従来のホスト分子では包接されなかった、より大きなゲスト分子においても包接挙動を示す可能性を示唆している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでは中性のゲスト分子を中心にゲスト探索を行ってきたが、今回合成した環状分子と静電的に相互作用することが可能な、カチオン性のゲスト分子についても検討を行い、課題解決に臨む。また、側鎖のアルキル鎖を水素結合可能なヒドロキシ基に変換することで、ホスト-ゲスト相互作用の増強を目指す予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の早い段階で目的化合物を合成でき、有機合成試薬や合成に必要な消耗品への支出を減らすことができたが、次年度以降に実施予定のゲスト分子のスクリーニングに費用がかさむと予想されるため。
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