研究課題/領域番号 |
21K20540
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
中尾 晃平 九州大学, 先導物質化学研究所, 学術研究員 (50909752)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | 塗布型有機EL / 樹状高分子 / 典型元素 |
研究実績の概要 |
典型金属コアを有する樹状高分子の創製に向けて、まずカルバゾールデンドリマーの世代数とその材料物性について検証した。第1、第2、第3世代のカルバゾールデンドリマーを組み込んだ単核アルミニウム錯体を合成し、評価を行った。その結果、第2世代を利用した錯体において、もっとも高性能な材料物性を示した。すなわち、この錯体においては第2世代のカルバゾールデンドリマーを利用することが最適であると結論づけた。また、興味深いことに、錯体の遅延蛍光の発現の有無を確認したところ、第2世代と第3世代で遅延蛍光の発現を確認できたが、第1世代では発現していなかった。しかしながら、非常に発光寿命の長い緑色リン光発光を示した。これは予期せぬ実験結果であり、材料物性としてかなり興味深いデータを得られた。 カルバゾールデンドリマーの世代数が決定したので、続いて錯体の配位子の対称性に注目した。ここまでは非対称な配位子を利用してきたが、対称な配位子を合成し、非対称体との比較検討を行った。対称体は有機溶媒への溶解性が乏しく、錯体化が難しかった。そこで、別の対称体としてカルバゾールデンドリマーの末端に脂肪族官能基であるターシャルブチル基を導入した分子も合成した。これらの分子を評価したところ、対称体とすることで、発光波長の長波長シフトおよび発光量子収率の大幅な改善が見られた。加えて、遅延蛍光がかなり強く観測された。これは対称体としたことで得られた重要な知見である。また、ターシャルブチル基を導入した分子ではさらに発光波長の長波長シフトと発光量子収率の向上が見られ、これはターシャルブチル基の電子供与性能が関係していると考えている。固体分散膜の評価も同様に実施したところ、対称体において高性能化を実現した。 今後は塗布型有機EL素子へ応用し、素子性能の評価を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カルバゾールデンドリマーの世代数と材料物性の評価の結果、第2世代がもっとも高性能化したことを明らかにした。また、対称な配位子を組み込んだ錯体を評価したところ、さらにその物性は改善した。遅延蛍光の発現の有無を確認したところ、対称体において強い遅延蛍光を発現しており、今後の材料開発における指針を得られた。これらの研究結果を国内学会に参加し、口頭発表で発信できた。しかしながら、多くのカルバゾールデンドリマーは単膜においても高い発光量子収率を示すことが知られているが、本研究で開発した誘導体では単膜の発光量子収率が著しく低い。末端のターシャルブチル基の導入により、若干の発光量子収率の改善は見られたものの、大幅な改善には至らなかった。ここまでに得られた研究成果を裏付けるために量子化学計算を実施している。 以上のことから、本研究課題はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
材料物性の評価を一通り終えたので、塗布型有機EL素子への応用した。その結果、素子構造を見直す必要があることが判明した。今後は、新しい塗布型有機EL素子の構造を決定し、性能評価を行う。構造が決定次第、新たな金属錯体としてアルミニウム以外の13族元素であるホウ素やガリウム等を中心金属とした金属錯体を合成する。ガリウムはアルミニウムよりも重い元素であるため、ある程度の重原子効果を期待できるはずである。そのため、蛍光およびリン光のハイブリッド発光性のガリウム錯体としての展開も可能だと考えている。また、ここまでは同一の配位子を利用した錯体を開発してきたが、異種の配位子を組み込んだバイポーラ型や一分子内のホスト・ゲスト化にも踏み込んでいく。同一の錯体を合成したのちに機能の異なる配位子と取り換え、性能評価を行う。この研究はかなり難しいことが予測されるが、過去にはアルミニウムを中心金属とした錯体の異種配位子型が報告されている。それを基に取り換えられる配位子の種類等を系統的に試み、適切な配位子を探索する。そのうえで、電子輸送に特化した配位子やホスト化した配位子等に展開していく予定である。錯体が開発でき次第、これらも同様に有機EL素子へ応用し、素子の性能評価を行う。 研究を進めていく中で、対称な配位子を組み込んだ錯体の物性が改善されたが、その合成や精製が難しいことも同時に明らかとなった。そこで、合成や精製が容易な非対称体の材料物性の改善を図るべく、種々の官能基の置換を試みる。今のところ、カルバゾールデンドリマーの電子輸送性の向上のためにフッ素化合物を導入することを予定している。 以上の研究成果を論文化することを視野に、研究を遂行していく。
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