研究課題/領域番号 |
21K20541
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
池下 雅広 日本大学, 生産工学部, 助手 (10908776)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | 円偏光発光 / 円二色性 / キラル / 遷移金属錯体 / 燐光発光 |
研究実績の概要 |
本研究では、3次元ディスプレイやセキュリティデバイスなどの次世代光情報技術への応用を目指した高効率円偏光燐光を示す平面四配位白金錯体の創成を目的としている。特に、遷移金属錯体の構造および凝集状態と円偏光発光特性の関連性を精査する基礎研究を行うことによって、高機能性材料を志向した研究に取り組んでいる。 本年の研究実績の一つとして、trans-ビス(β-イミノメチルナフトキシ)白金(II)錯体の分子構造をかさ高い環状置換基の導入によって「折り曲げる」ことにより、円偏光発光(CPL; Circularly Polarized Luminescence)強度が増強されることを見出した。本研究成果はWiley社の国際研究誌であるChemistryOpen誌に掲載され、掲載紙の表紙にも採択された。また、所属機関および共同研究先である近畿大学からのプレスリリースも行っている(タイトル: 分子の「折り曲げ」に基づく新たな円偏光発光分子の開発に成功)。またその他にも、燐光発光性白金錯体へのポリエチレングリコール(PEG)鎖の導入によって、温和な温度で液状化可能な材料の合成にも成功している。最も低い融点を示した錯体は43℃で融解し、さらに液体状態において希薄溶液状態よりも7倍ほど強いCPLを示すことが判明した。本錯体の研究成果は研究2年目となる2022年度に学会発表および原著論文としての発表を予定しており、分子修飾によるさらなる融点の低下(最終目標は常温液体状態)を目指した研究も現在進行中である。以上に示した成果のように、予定していた研究はおおむね順調に進行している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題で設計、合成された遷移金属錯体が効率良く円偏光発光を示すことが判明し、今後さらなる展開が期待されるため、おおむね順調と判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として、これまでに得られた遷移金属錯体の円偏光発行挙動について、包括的に理解し研究をまとめる作業を行っていく。また、所属学会や原著論文による発表を積極的に行い、情報発信に努めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は参加を予定した国内学会がコロナ禍の影響でオンライン開催に変更されたことや、発表論文のCover picture掲載費用の請求が遅れて次年度支払いになったことなどがあり、当初予定していた支払いをすることがなかった。次年度では当初計画していた論文掲載費用の支払いなども含め、研究用試薬・機器の購入なども併せて繰り越し金額分の予算執行を行う予定である。
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