本研究では、3次元ディスプレイやセキュリティデバイスなどの次世代光情報技術への応用を目指した高効率円偏光燐光を示す平面四配位白金錯体の創成を目的としている。特に、遷移金属錯体の構造および凝集状態と円偏光発光特性(CPL)の関連性を精査する基礎研究を行うことによって、高機能性材料を志向した研究に取り組んでいる。 R3年度では、キラルなシッフ塩基配位子を有する白金錯体の合成を行い、それらのCPL特性について調査を行った。その結果、配位子上の置換基のかさ高さによって、CPL特性を制御可能なことが判明し、その成果を原著論文 (ChemistryOpen 2022)として発表済みである。 また、R4年度は、種々のキラルな配位子を有する錯体群の構造および凝集状態とCPL特性の相関関係について調査を行った。その結果、高輝度円偏光燐光性白金錯体の開発(Chem. Lett. 2022)配位構造変化に伴うCPLの回転方向制御 (Chem. Commun. 2022)、芳香環拡張に伴うマルチカラーCPL (Phys. Chem. Chem. Phys. 2022)、外部環境応答型円偏光発光性ホウ素錯体の合成(RSC Adv.2022)を達成し、高効率なCPL材料創成のための知見を蓄積した。さらにごく最近では、キラル分子の集積状態を制御することで、ペレット状態における巨大なCPLの発現(ChemPhotoChem 2023)、液状化に伴うCPLの増幅(ChemPhotoChem 2023)も達成した。当該研究成果は、高効率な円偏光発光体を構築する上で重要な分子設計指針を示すものであり、その成果を原著論文として6報発表することができた。 また、R4年度関連研究についての原著論文2報を執筆中であり、R5年度中に投稿予定である。以上に示した成果のように、予定していた研究はおおむね順調に進行した。
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