研究課題/領域番号 |
21K20542
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
西村 涼 立教大学, 理学部, 助教 (00908634)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | フォトクロミズム / 有機結晶 / 構造相転移 / マルテンサイト変態 / 形状記憶効果 |
研究実績の概要 |
本年度行った研究は、本研究課題の目的を達成するために設計した光応答性分子の合成である。まず、申請書で提案した三つの化合物のうち、二つの新規ジアリールエテン誘導体、末端にメチル基をもつ誘導体(2oMe)とフルオロ基をもつ誘導体(2oF)に関して、合成、精製を行い、結晶作成、構造解析、光応答性の調査を行った。 合成は、ジアリールエテン骨格の末端にカルボニル基を有する前駆体に対して、2-Chloro-4,6-dimethoxytriazine、N-methylmorpholine、をジクロロメタン溶液中で反応させ、そこに、対応するアミンを加える事で、2oMe(白色固体)は収率65%、2oF(白色固体)は収率51%で合成することが出来た。これらの誘導体の合成は、1H NMR, 13C NMR, 19F NMRによって確認できており、元素分析によって、サンプルの純度が高い事も確認された。これらの白色固体をメタノールで再結晶することで、2oMeの針状結晶と、2oFの板状結晶を得た。これらの結晶に対して、波長254 nmの紫外線を照射したところ、化合物2oMeは色、形状の変化を示さず、化合物2oFは紫色に着色するフォトクロミズムを示し、形状変化は見られなかった。 SPring-8での単結晶X線構造解析で、上記の分子を含め、他の類似した化合物に関して、紫外線照射前後の単結晶X線構造解析を行った。その結果、この研究の基となった分子と同様の挙動を示す結晶は観測されなかった。 現在、上記の誘導体の置換基を変えたものの設計・合成と並行して、異なる分子設計のアプローチで研究を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
申請書に記載した実験はおおむね完了しているが、分子構造と結晶構造の関係性の解明や、機能性の発現までは至っていない。現在、異なる誘導体の設計・合成を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究方策としては、類縁体の合成と、異なるアプローチで分子を設計し、合成・単結晶X線構造解析を進め、光や光以外の刺激応答性を調べる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、予定していた学会のオンライン化による宿泊費、旅費の不使用、また、論文執筆までできなかったので、掲載料、校閲料の不使用、PCを他予算での購入、等が主な理由である。2022年度、論文執筆に至った場合、掲載料、校閲料として使用する。また、その他の2021年度分と合わせた使用計画については、2022年度、申請よりも性能のいいテンシロン万能試験機の購入の手続きを進めている。
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