研究課題/領域番号 |
21K20543
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
毛 斉悦 同志社大学, 理工学研究科, 助手 (10906762)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | 火災ガス中毒 / 人工ヘモグロビン / シクロデキストリン / ポルフィリン |
研究実績の概要 |
本研究では、火災現場で実装できる火災ガスに対する解毒剤の開発を目指している。火災で発する毒ガス成分の中で、主に一酸化炭素やシアン化水素が致命な毒性を示す。我々が開発したシクロデキストリン /ポルフィリン超分子錯体であるhemoCD-Pは、生体内において、COスカベンジャーとして機能する。hemoCD-Iは生体内でシアン化物イオンと強く結合する。本研究はこの二つの化合物の毒物に対する特異的な認識能を利用し、CO/HCNを同時に解毒することができる薬剤hemoCD-Twinsを開発した。hemoCD-Twinsを健常マウスに投与し、生体内における薬物動態などの基本物性も調べたところ、ラットに血圧および心拍に影響がなく、さらに、速やかに尿中に排出されることがわかった。次に、動物実験を用いて、解毒剤であるhemoCD-Twinsの有効性を実証した。CO/HCN同時中毒マウスモデルを作成し、CO/HCNの混合ガスをマウスに吸入させた後、コントロール群の0%の生存率に対して、hemoCD-Twinsを投与したマウスの生存率が8割に著しく上昇した。さらに、hemoCD-Twinsを投与した後に生存したマウスにおいては、速やかに行動回復したことも観測できた。また、国立建築研究所の趙博士との共同研究も進んでおり、実際の火災で発する煙をマウスに吸入させ、hemoCD-Twins投与群はコントロール群より生存率が向上したことを証明した。火災中毒の解毒剤として特許の出願を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
解毒剤の基本物性は分光分析などにより評価した。さらに動物実験を用いて、火災で発する毒ガスに対する解毒効果を実証し、特許出願も達成することができた。
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今後の研究の推進方策 |
火災ガス中毒の本質的なメカニズムの解明を目指し、hemoCD-Twinsの投与により,生体内の酸素供与環境が改善されるかどうかをミトコンドリアの活性評価などにより詳細に検討する。hemoCD-Twinsによる中毒の治療効果を検証してから解毒メカニズムの詳細を明らかにし、学術論文として公表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度では、hemoCD-Twinsは毒ガス中毒の解毒剤として使えることを証明した。 来年度においては、hemoCD-Twinsの解毒機序を評価する実験に本格的に取り込む。in vivoおよびin vitroにおいて、毒成分が致命的な毒性を示す原因を調べる。さらに、hemoCD-Twinsの解毒メカニズムを解明する。そのため、必要なアッセイや測定装置を購入する。
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