研究課題
本研究は、色素増感光触媒粉末における光励起キャリアダイナミクスを、逆電子移動過程を中心に明らかにすることを目的とした。特に、光触媒反応に必要不可欠な助触媒などの表面修飾が、光励起キャリアの挙動に与える影響に注目した。色素増感光触媒で最も高い活性を示す層状酸化物ナノシートのHCa2Nb3O10と、酸化物光触媒の代表格であるSrTiO3を用い、水素製造のためのPt助触媒や、表面特性の変化を目的とした絶縁体とポリマーの修飾の影響を調査し、以下の成果を得た。1. 酸化物光触媒の調整方法の違いにより形成される表面欠陥が、光励起キャリアの逆電子移動に与える影響を明らかにした。2.絶縁体層やポリマーの修飾によって光触媒粉末の表面電位を変化させることで、反応溶液中のイオンとの反応性を制御できることを見出した。絶縁体とポリマーを共修飾することで、これらのいずれも修飾しない試料の100倍の水分解活性を達成した。3. 水素生成助触媒であるPt粒子の大きさにより、光励起キャリアの電子注入過程及び逆電子移動過程に与える影響を明らかにした。4. 触媒反応に用いる還元剤の特性の違いを利用することで、光励起キャリアの電子注入・失活・逆電子移動を分離して評価する方法を見出した。以上の成果は、表面欠陥・助触媒の状態・吸着色素の反応性という、制御が困難でかつ影響が大きなパラメータを独立して評価することを可能にした。これにより、色素増感型光触媒を用いた太陽光エネルギーの変換効率の向上に貢献した。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
Applied Catalysis A: General
巻: 654 ページ: 119086~119086
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Science Advances
巻: 8 ページ: -
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