研究実績の概要 |
本研究では代表者が独自開発したSbSI:Sb2S3光電変換素子において発現した特異な出力特性-照射波長依存性(紫外~可視)に注目し、その出力-波長依存性の評価とメカニズム調査、波長センシング機能向上、素子構造変化による波長波長依存性の変調に取り組んだ。初年度は、素子の電荷輸送層や膜厚の影響、照射波長や光強度による出力特性の変化を包括的に調査し、透明電極/TiO2/SbSI:Sb2S3/PCPDTBT(有機半導体)/金電極からなる素子構造において特に大きな出力-波長依存性が得られることを突き止めた。また、極性溶媒蒸気を吸着させることで波長応答速度が大幅に向上することも発見した。さらに、過渡電圧測定やCELIV法等を駆使し、本現象の電気的機構を見出した。以上の成果から、2021年秋季応用物理学会講演奨励賞の受賞に至った。 最終年では上記の成果を論文投稿し、Adv. Funct. Mater.誌への掲載に至った。加えてプレスリリースや月刊「化学」への解説記事寄稿も行っている。さらに新たな試みとして電子スピン共鳴による波長応答時のキャリア量変化の定量を行った。また、正孔輸送材料をpoly triarylamine に変更した素子において、紫外・可視光照射時の挙動が逆転する「逆挙動の波長依存特性」を新たに発見した。また、多様なBi,Sb系材料の探索研究に参画し、Cs-(Bi,Sb)-I系材料において比較的高い2.36%の光電変換効率を得るに至った。他にも新材料水素化酸化モリブデンの電荷ダイナミクス解明など幅広い材料の物性解明を行った。 以上のように、代表者はBi,Sb系材料に注目し、既存の光電変換素子では実現できなかった単一素子での波長応答に成功し、その機構の一端の解明や特性向上にも成功した。今後応答速度や波長感度をさらに向上させることでイメージセンサ等への応用が期待される。
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