高活性・高機能触媒実現のためには触媒反応活性点の精密な構造制御が必要不可欠である。分子状金属酸化物クラスターである欠損型ポリオキソメタレート (POM)は剛直な無機多座配位子として機能し、導入した金属活性点構造を原子レベルで制御することができる。しかし、多核金属活性点においては、多電子的な酸化還元反応が期待される一方で、活性点同士の縮合反応等により触媒としての利用が困難であるという問題があった。本研究では凹型の欠損サイトを有するPOMを新規に合成し鋳型として用いることで、金属多核構造の一部をPOM骨格に埋没させ従来の欠点を克服した金属多核活性点を有する高活性・高機能触媒の開発を行うことを目的としている。 6欠損型POMを縮合させることにより凹型欠損サイトを有するPOMの合成を試みた結果、酸の添加や加熱による縮合反応では主にPOM骨格の異性化反応が進行する一方で、配位子を添加することにより凹型欠損サイトを有するPOMの合成に成功した。また、合成条件に応じて異性化するPOMの種類を変化させることも可能であり、これまで明らかとはなっていなかった6欠損型POMの縮合・異性化反応経路を制御することにも成功した。凹型欠損サイトに配位した有機配位子はPOMの溶解により容易に脱離することから、多核金属活性点導入により安定な金属多核構造を構築することが可能となり、今後高活性・高機能な新規触媒の開発が期待される。
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