研究課題/領域番号 |
21K20561
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
保坂 知宙 東京理科大学, 研究推進機構総合研究院, 助教 (00907397)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | カリウムイオン電池 / ナトリウムイオン電池 / プルシアンブルー類似体 |
研究実績の概要 |
初年度の2021年度は、ナトリウムおよびカリウムプルシアンブルー類似体への塩化物イオンおよび臭化物イオンの導入手法を検討した。具体的には、プルシアンブルー類似体の合成後に配位水を置換する配位子置換法および配位子を含有する溶液からプルシアンブルー類似体を合成する直接合成法により試料を合成し、組成と電気化学特性を調査した。 その結果、配位子置換法よりも直接合成法の方がこれらの配位子の導入が容易であることが明らかになった。また、塩化物イオンおよび臭化物イオンを導入した試料ではナトリウムおよびカリウムの含有量が増加していることが明らかになり、アルカリ金属量を増加させることに成功した。特に塩化物イオンを導入したナトリウムプルシアンブルー類似体は既報の試料と比較して大きな初回放電容量を示し、エネルギー密度が向上した。一方、これらの配位子を導入したカリウムプルシアンブルー類似体は配位子を導入していない試料よりも小さな放電容量を示した。これは、格子中の空孔サイトが減少したことによりKイオンの拡散性が低下したためと推測され、空孔量の制御が必要であることが明らかになった。 以上より、配位子の直接導入法を用いた合成によりプルシアンブルー類似体の空孔量を制御できれば、プルシアンブルー類似体の高エネルギー密度化が実現可能であることが示唆された。また、得られた成果は2022年3月に開催された電気化学会第89回大会において口頭発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下の通り、当初の計画と一部異なる結果が得られた点があったものの、代替手法を確立しており研究は順調に進展している。 本研究計画の最重要点である種々の配位子を導入したプルシアンブルー類似体の合成手法について、当初想定していた配位子置換法では十分に配位子が置換しないことが明らかになったため、直接導入法を検討した。合成溶液の濃度等の一連の検討により直接導入法により塩化物イオンおよび臭化物イオン配位子の導入を達成した。 これらの配位子を導入したナトリウムプルシアンブルー類似体はナトリウム電池において大きな容量を達成した一方で、カリウムプルシアンブルー類似体の容量は不十分であった。 直接導入法においては、沈殿溶液に配位子を含有させる必要があるため、この影響によりプルシアンブルー類似体の粒径や欠陥量の制御が難しく、良好な電気化学特性を持つと予想される組成の試料の合成が難しいことが技術的な課題である。2022年度は本課題を解決し、プルシアンブルー類似体の電気化学特性の精密制御を達成する。
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今後の研究の推進方策 |
前述の通り配位子を含有する溶液からプルシアンブルー類似体を沈殿合成する直接導入法においては、プルシアンブルー類似体の空孔量の制御が難しいことが課題である。本課題を解決するため、2022年度は反応溶液の濃度、温度、原料の価数を変更し空孔量を制御する。既にこれらのパラメータにより空孔量が変化することを見出しており、今後は空孔量と配位子の導入量を最適化する。 また、2022年度は塩化物イオンおよび臭化物イオンに加えて、フッ化物イオン、シアン化物イオン、アセトニトリルの導入も実施する。これらの結果を基に、種々の配位子がプルシアンブルー類似体の電気化学特性に与える影響を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由: 1. 参加学会がオンライン開催になり、旅費の支出がなかったため。2. 水熱法での配位子置換が予想通り進行しないことが明らかになり、購入を予定していた水熱合成容器の購入を取りやめたため。 次年度使用額の使用計画: 電気化学と測定を一層推進するためのポテンショスタットを購入する。また、国際学会IMLB2022への参加を予定している。
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