研究課題/領域番号 |
21K20563
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
和田 彩佳 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 研究員 (80711176)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | 蛍光 / 化学分離 / 希土類元素 / エポキシ開環反応 / ネオジム / ジスプロシウム |
研究実績の概要 |
ネオジム磁石には、ネオジム(Nd)以外に含まれる貴重なジスプロシウム(Dy)が含まれている。Dyを化学分離において効率的に回収するために、Dyと同様のカラム分離挙動を示すユーロピウム(Eu)が発光する性質に着目し、分離境界がリアルタイムで見える「可視化カートリッジ」を開発して簡便・確実にNdを除去することで微量Dy測定の実現を目指す。 2021年度は、可視化カートリッジの作製に取り組んだ。可視化カートリッジの充填剤は、多量のエポキシ基を表面に持つ樹脂とアミノ基を持つ蛍光配位子のエポキシ開環反応での作製を目指した。 まずは、配位子を樹脂に結合させて、蛍光を発するかを確認した。配位子はすでにEuが配位した試薬を用い、これは紫外線によって蛍光を発する。マイクロチューブに30 mgの樹脂と2 mgの配位子を入れ、エタノールを溶媒として加えた後80℃の湯浴に30時間入れた。得られた樹脂は蛍光を発したため、配位子が樹脂と結合したと考えた。 次に配位子からEuを外す方法を検討した。硝酸による脱離を試みたところ、樹脂は0.25 M以上の濃度で配位子ごと脱落した。一方、1 M以上のEDTA溶液によって、樹脂と配位子が結合したままEuだけ外すことができた。これにより、樹脂とATBTAを結合させた樹脂を作製することに成功した。 一方で、分離後の測定に用いる装置である、トリプル四重極誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS/MS)による、高濃度ネオジム溶液中の微量希土類元素の測定も実施した。高純度酸化ネオジムから調製した10 mg/kgネオジム溶液に含まれる微量不純物希土類元素を測定したところ、酸素ガスによって検出する化学種を変化させても、ジスプロシウムはネオジム酸化物の影響によって正確な定量値を得ることが難しいため、化学分離が必須であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画では、2021年度に可視化カートリッジの完成を目標としていた。現在、可視化カートリッジの充填剤の開発状況は、樹脂とATBTAの結合には成功したものの、Euを外した後では再度Eu溶液を接触させても蛍光が戻らず、Euの通過を知らせる可視化カートリッジとしては機能しないため、完成とは言えない。この問題を解決するには、様々な条件検討が必要となっており、この作業に時間がかかっているため、やや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は可視化カートリッジの完成を目指す一方、可視化カートリッジの開発が進まない場合も想定して、化学分離条件の検討および検出装置(ICP-MS/MS)での測定条件の最適化にも取り組む。 化学分離は陰イオン交換樹脂の使用を想定している。溶離液が可視化カートリッジの構造を破壊しないことを確認する。 ICP-MS/MSでは酸素ガスを用いた測定において、測定条件の最適化の余地があるため、ガス流量などパラメーターを調整することで最適化する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は、研究成果は得られていたものの成果報告するには至らず、当初予定していた学会への参加を延期した。そこで、2022年度に開催される学会での発表に必要な旅費および参加費と、研究費の原資として活用するため、2021年度分を繰り越すこととした。
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