研究課題/領域番号 |
21K20565
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
逢坂 文那 北海道大学, 農学研究院, 助教 (90908485)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | microRNA / 腸内細菌叢 / 遺伝子サイレンシング |
研究実績の概要 |
本研究では、腸内細菌叢が腸管粘膜免疫を調節する際に、大腸粘膜固有層白血球においてmiR-200ファミリーによる遺伝子サイレンシングを介してインターロイキン-2(IL-2)産生が制御されることを直接的に証明するため、以下のように検証を進めた。 1) IL-2産生細胞のモデルとしてマウスT細胞株EL-4細胞を使用し、miR-200ファミリーをエレクトロポレーション法により遺伝子導入した。その結果、標的遺伝子であるBcl11b、Ets1、およびZeb1のmRNAレベルの低下が観察された。一方で、miR-200ファミリー導入によるZEB1のタンパクレベルの低下が観察されたが、BCL11BおよびETS-1のタンパクレベルの低下は観察されなかった。さらに、EL-4細胞の培養上清中のIL-2の産生レベルをELISA法により解析した結果、miR-200ファミリー導入による産生抑制が観察された。 2) 1)と同様に、EL-4細胞にmiR-200ファミリーを導入し、RNA免疫沈降法によってmiR-200ファミリーと相互作用する標的mRNAの同定を目指した。はじめに、miR-200ファミリーを導入していないEL-4細胞を用いて、免疫沈降および免疫沈降複合体からのトータルRNAの分離を行った。その結果、RNA誘導遺伝子サイレンシング複合体を形成するタンパク質であるAGO2抗体による免疫沈降後(Post-IP AGO2)サンプルにおいて、AGO2タンパク質のシグナルが観察されたが、Post-IP AGO2サンプルから分離したトータルRNAの量および質は、マイクロアレイ解析に供するには不十分であったため、miR-200ファミリーの標的遺伝子の同定には至らなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の目的は、1) miR-200ファミリー mimicの導入による標的遺伝子サイレンシングの証明、2) RNA免疫沈降法によるmiR-200ファミリーと標的遺伝子の相互作用の証明の2点である。このうち、研究実績の概要に記載した通り、miR-200ファミリーの導入による標的遺伝子の発現レベルの低下およびIL-2の産生抑制を明らかにしたことから、目的1)は達成できたと言える。しかしながら、やはり概要に記載したように、miR-200ファミリーと直接相互作用する標的mRNAの同定には至らなかったことから、目的2)は未達成である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は概ね順調に進展している。従って当初の計画通りに研究を推進していく。具体的には下記の通りである。 1) miR-200ファミリーによる標的遺伝子のサイレンシングおよびIL-2産生の減少を、マウス個体において直接的に証明する。 2) 標的遺伝子のサイレンシングによるIL-2産生低下を直接証明するため、EL-4細胞への標的遺伝子のsiRNAの導入によるIL-2産生抑制をELISA法により解析する。 3) 本年度の研究において、miR-200ファミリーと直接相互作用する標的mRNAを同定することはできなかったことから、EL-4細胞中に発現しているAGO2タンパク質の発現量が低いと考え、EL-4細胞におけるAGO2の一過性発現および恒常発現株の作成を検討し、概要で記載した同様の実験を行う。
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