研究実績の概要 |
本研究課題である広域抗生物質amycolamicin(1)の全合成研究を実施し、課題申請1年目において、1の全合成を達成した。まず、1を三つのユニット(A,C,DE)に分割して合成し、C及びDEユニットをグリコシル化で連結してCDEユニットとした。続いて、AユニットとL-バリンメチルエステルとのN-グリコシル化で調製したAユニット誘導体とCDEユニットをN-アシル化反応に付すことで、N-グリコシド結合が立体収束しながら反応が進行し、単一アノマーとしてA-CDEユニットの連結体を得ることに成功した。A-CDEユニットの連結体に対してDieckmann縮合によりBユニットを構築した後、アミンによるAユニット部の環状カーボネートの開環でカーバメート基を導入した。最後にアセチル化と保護基の除去により、1の全合成を達成した。申請課題2年目においては、構造活性相関研究に用いるため、1のAおよびABユニットの合成を実施した。Aユニットの合成では、環状オルトエステル基を糖ヒドロキシ基の保護基として用い、加水分解することで位置選択的なアセチル基の導入を実現した。その後、カーバメート化とルイス酸によるアノマー位の加水分解を経てAユニットを全8工程で合成した。ABユニットの合成は、まずL-フコースに対するDMC法によりアノマー位選択的かつ高立体選択的なグリコシル化を行った後、直接環状カーボネート基を導入した。続いて、酸化還元によるヒドロキシ基の立体反転とL-バリン誘導体とのN-グリコシル化でAユニット誘導体を合成した。本合成では5工程でAユニット誘導体を合成しており、以前の9工程から短工程化することができた。Aユニット誘導体にBestmann ylideを用いてBユニットを一挙に構築し、アミンによるカーバメート基の導入とBn基の除去によりABユニットの合成を完了した。
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