研究課題/領域番号 |
21K20572
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
池田 敦子 広島大学, 統合生命科学研究科(生), 助教 (70909093)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | 出芽酵母 / Tricalbin / セラミド / 非小胞輸送 |
研究実績の概要 |
真核細胞において、セラミドはその代謝過程で小胞体からゴルジ体へ運ばれる。セラミドのオルガネラ間輸送には、小胞輸送に加えて非小胞輸送が存在する。これまでの解析から私たちは、真核細胞で保存されたTricalbinタンパク質ファミリー (Tcb1, 2, 3) が、セラミドの非小胞輸送に必要であることを発見した。しかしながら、Tricalbinが直接結合するターゲットについて、実験的エビデンスは示されていない。本研究は、Tricalbinを介したセラミド非小胞輸送メカニズムとその生理的意義の解明を目指す。この目的を達成するために、本年度は先ず、Tcb3の結合ターゲットおよび結合に寄与するアミノ酸残基の特定を試みた。研究実績の概要は、以下の3点である。(1)Tcb3のSMPドメインまたはC2ドメインと結合している脂質の解析を行った。その結果、SMPドメインがセラミドと結合していることが示された。(2)次に、結合分子メカニズムの解明に迫るため、Tcb3タンパク質の立体構造モデルの構築を試みた。その結果、Tcb3のSMPドメイン内において疎水性アミノ酸から成る脂質結合ポケットと推定される構造を確認することに成功した。(3)立体構造モデルから得られた推定脂質結合ポケットの疎水性アミノ酸について、アミノ酸置換変異体を発現するプラスミドの作製を行った。また、立体構造モデルのシミュレーションにより、アミノ酸置換後もポケット構造は維持されることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、研究実施計画で提案していたTcb3とターゲット脂質との結合性についての解析を実施し、ポジティブな結果を得ることが出来た。なかでも特筆すべき点は、Tcb3とセラミドとの結合が、Tcb3のタンパク質ドメインのうちSMPドメイン特異的であることが示されたことである。これは、本研究の目的であるTricalbinを介したセラミド非小胞輸送メカニズムの解明において、大きな成果であると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、作製したアミノ酸置換変異体を用いて、脂質との結合性への影響を調べる。また当初の計画通り、非小胞輸送における脂肪滴の関与についての解析を行う。ひとつは、Tcb3が小胞体と脂肪滴間やゴルジ体と脂肪滴間の膜接触領域に局在している可能性を、蛍光顕微鏡観察により検証する。もうひとつは、脂肪滴が形成されない細胞でセラミドの輸送が影響を受けるか、脂質代謝ラベリングにより解析する。これらの解析を行うために必要な株の一部は既に所持しており、残りについても順調に作製が進んでいる。
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