研究実績の概要 |
キチンはアスペルギウスやカンジダなどの病原性真菌の細胞壁の主要な構成成分である。ほ乳類は2種類のキチナーゼ[ chitotriosidase (Chit1), acidic mammalian chitinase (AMCase) ]を発現している。キチンを化学処理して得られたキチンオリゴマーは自然免疫を増強する機能をもつことが報告されており,本研究ではこの知見からほ乳類キチナーゼが病原性真菌に含まれるキチンを分解し,その過程で生成されたキチンオリゴマーが自然免疫を増強すると仮説をたて,研究を行った。初年度は,マウス AMCase が脱アセチル化度の違いによってキトサンから異なるキトオリゴマーを生成することを報告した (Wakita et al., 2021)。また,ヒト Chit1 に変異を加え簡便なキチン検出方法の開発を行った。その結果四量体以上を好感度に検出できる系の開発に成功した (Yamanaka et al., 2022)。ほ乳類キチナーゼによって生成されたキチンオリゴマーの定量がより正確に行えるようになった。最終年度は,ほ乳類キチナーゼによって生成したキチンオリゴマーをマウスより採取した免疫細胞に作用させ,サイトカインやケモカインの増減を想定した。この作用機序を明何するため Cell line での遺伝子組換え実験によって,受容体などの解析を行おうとした。しかし,Cell lineで実験を行ったが,マウスから採取した免疫細胞の結果と完全に一致しなかった。現在,Cell lineで欠損している要因を明らかにしている。また,多量のキチンオリゴマー生成のために新たにほ乳類キチナーゼの大腸菌での発現系を構築した。これにより従来の10倍以上の酵素の取得が可能となった。現在,この結果をまとめ論文の投稿準備を進めている。
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