植物細胞には、細胞内の異なる場所に免疫受容体(NLR:Nucleotide binding-leucine rich repeat protein)があり、病原体が分泌するエフェクター分子を認識し免疫システムを活性化させる。近年、植物は機能分化したNLR受容体をもち、複数のNLR受容体が協調的に機能することが分かってきた。しかし、植物細胞内で複数のNLR免疫受容体が“いつ”、“どこで”活性化し、植物免疫システムを駆動するかは、ほとんど未解明である。本研究では、ナス科植物がもつNLRサブファミリーに着目し、複数のNLRタンパク質の活性化前後の細胞内局在変化を調べた。 植物の機能分化型NLRは、エフェクター認識に特化した“センサーNLR”と、免疫シグナル誘導に関わる“ヘルパーNLR”に大別される。本研究では、エフェクター認識後にこれらNLRタンパク質の細胞内局在が変化するという仮説を立てた。しかし、NLR免疫は細胞死応答を伴うため、活性化後のNLRの細胞内局在を解析することは技術的に困難であった。この問題点を解決するため、タンパク質安定性を損なわずに細胞死誘導能を抑制したNLR変異体を活用し、細胞内局在解析系を構築した。この解析により、ナス科植物がもつ複数のセンサーNLRおよびヘルパーNLRの細胞内局在を調べたところ、活性化前にそれらNLRは異なる細胞内局在パターンを示すこと、調査したNLRの多くが活性化後に細胞内局在を変化させることを見出した。また、同様の細胞死抑制変異手法は、ナス科植物だけでなく、単子葉植物のNLRにも有効であることが分かり、今後、種子植物のNLR免疫機構を分子レベルで理解することに繋がると期待される。
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