研究課題/領域番号 |
21K20585
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研究機関 | 福井県立大学 |
研究代表者 |
西嶋 遼 福井県立大学, 生物資源学部, 助教 (00841561)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2024-03-31
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キーワード | 合成パンコムギ / タルホコムギ / ゲノム間クロストーク / シス・トランス因子 / 種子 / 胚乳 / RNA-seq / トランスクリプトーム関連解析 |
研究実績の概要 |
一般に異質倍数体種は祖先二倍体種に比べて高いストレス耐性を示す。これは、様々な環境に応じて同祖遺伝子の発現を調整し、使い分けることで、適応性を向上させてきたためと考えられている。近年、モデル植物の異質倍数体種において、ゲノム間クロストークによる発現バイアスと有用形質との関連性が議論されてきたが、特にコムギではゲノムの大きさと複雑性から理解が進んでこなかった。本研究では、倍数性進化の過程を人為的に再現した合成6倍体コムギ系統群と、祖先二倍体種のゲノム多型情報を組み合わせることによって、コムギにおけるトランスクリプトーム関連解析の適用可能性を検証する。植物の発生段階の任意の一点、あるいはストレス条件下で働くシス・トランス因子を網羅的に単離できれば、エンハンサーの改変など、新たな育種への展開が期待される。 本年度は、合成パンコムギ82系統ならびにABゲノム提供親の4倍体品種Langdonの開花1週間後の胚乳を材料にトランスクリプトーム解析を行った。研究計画時点ではBrAD-seq法(Townsley et al. 2015)による3’末端RNA-seqライブラリを予定していたが、同祖遺伝子を判別できなくなると考え、全長のライブラリに変更した。パンコムギ参照配列(the IWGSC RefSeq v2.1 from URGI repository: Alaux et al. 2018)由来のABゲノムとタルホコムギ参照配列(Aet_v5.0: Wang et al. 2021)を統合した擬似合成パンコムギ参照配列に対し、EAGLE-RC (Kuo et al. 2018)を用いて同祖遺伝子を区別しながらリードをマッピングした。その結果、発現していた7726同祖遺伝子群のうち、84.1%はサブゲノム間で発現に差がなく、15.9%はいずれか1つのサブゲノムで高発現ないし低発現を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、合成パンコムギ82系統の胚乳のトランスクリプトームデータの取得と、穂や種子の形態形質の調査を行った。しかし、胚乳からのRNA抽出、ライブラリ調製、シーケンス解析の各工程に予定よりも時間を要し、年度内は初歩的な解析に止まり、トランスクリプトーム関連解析には至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
サブゲノム間で発現に差の認められた1228同祖遺伝子群を中心に、タルホコムギの多型情報(Gaurav et al. 2021)を用いてTWASを実施する。TWAS内におけるGWASにはrrBLUP (Endelman et al. 2011)を、eQTL解析にはMatrix eQTL (Shabalin 2012)の使用を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では種子登熟期に先立って幼苗でもトランスクリプトーム解析を実施する予定であったが、種子の発芽率が低くサンプル数を確保できなかったために実施を見合わせた。次年度使用額はライブラリ調製非、NGS解析の外部委託費、ならびにデータ解析とバックアップに必要なハードディスクの費用等に充てる。
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