研究課題/領域番号 |
21K20591
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
吉川 晟弘 東京大学, 大気海洋研究所, 特任研究員 (70906148)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | 相利共生 / 行動 / 沿岸生態系 / 対捕食者戦略 / 分類 / 系統 |
研究実績の概要 |
今年度は、潜水調査や、漁港の混獲物調査などにより、イソギンチャク類・ヤドカリ類(共生・自由生活個体)を採集し、試料の成長段階・成熟の有無・個体群サイズ(体サイズ・生息密度)・共生率の調査を実施した。調査海域では、イソギンチャク類だけでなく、ヒドロ虫類も多数採集されたため、これらも研究の対象とした。今年度は、COVID-19の感染拡大防止のために出張日程や期間が制限されたため、当初計画していた東京湾での調査が計画通り進められなかった。そのため、国立科学博物館や千葉県立中央博物館に保管されている底引網調査で得られた未整理標本を調査することで、東京湾近海の共生種相・様相・動態の把握を試みた。 採集されたイソギンチャク類の種同定を実施したところ、分類学的に混乱している場合や、未記載種であることが判明したため、詳細な形態分析とDNA解析により、それらの混乱の解決し、必要に応じて新種の記載を実施した。これに際し、当初予定していた三陸沿岸と東京湾に加え、駿河湾(静岡県沖)や、熊野灘(三重県沖)、播磨灘(兵庫県沖)、奄美大島周辺で採集された標本との比較を行った。イソギンチャク・ヒドロ虫類においては、各海域の優先種であっても、分類学的に混乱している例や、学名が与えられていない例が散見されたため、次年度も引き続き、これらの分類学的位置の解明に向けた分析を実施する必要がある。 今年度は、次年度に予定している行動実験に向けて、三陸沿岸および東京湾に多産しており、かつ飼育が容易である共生種を選定し、それらの種の飼育実験環境を整備した。次年度からは、当初の予定通り、捕食者密度に応じた共生率の変化を調査するとともに、共生関係にある両者の栄養状態などを分析する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ヤドカリ類と共生しているイソギンチャク類の分類学的知見が乏しくかつ混乱しており、種の判別が困難であることが、野外調査で得られたサンプルの精査において大きな障壁となった。未記載種が多数存在するだけでなく、国内の一般書において、十分な分類学的精査がされることなく与えられた和名や学名が、そのまま国内で適応されている事例が散見され、学術的な種の認識との齟齬が多く見られた。そのため、これらの種が学術的に認識されている種と同一であるかを断定することが不可能であり、これらに対して分類学的な精査をせざるを得なくなった。今年度は、イソギンチャク類の種同定、および分類学的混乱の解決に力を入れて研究を展開しており、イソギンチャクの種が判別されたものについては、予定通り、その組み合わせに関する生態データ(成長段階・成熟の有無など)を記録し、次年度に実施する行動実験に用いる組み合わせの選定を行った。
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今後の研究の推進方策 |
前述のとおり、イソギンチャク類の種判別に関わる障壁により、研究計画にやや遅れが出ている。次年度は、今年度と同様に、イソギンチャク類の分類学的問題を解決しつつ、野外調査を継続し、自然下における共生組み合わせの動態、および捕食者生息密度との関係を解明する。また未記載種を新種として記載する際には、捕食者が不在の飼育環境において、宿主ヤドカリの貝殻交換後に両者がどれほど共生の継続に参加するのかを動画で記録し、これを共生継続に関わる自然史学的記録として報告する。またイソギンチャク類の種が判別できた組み合わせについては、当初の予定通り、捕食者密度の異なる水槽で飼育し、共生構築における捕食者密度や物理的刺激などの外部環境との関わりを調査する。
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