研究実績の概要 |
本年度は非火山灰土壌および火山灰土壌に成立するコナラ林を4調査地ずつ、合計8調査地選んだ。また2021年7-9月にコナラの三次根までの細根滲出物を野外で獲得し、有機酸の分泌速度を求めた。これまでに取得していたデータ(表層の非根圏土壌と根圏土壌のリン画分、微生物バイオマスC,N,P濃度、ホスファターゼ活性)とのデータをまとめた。非火山灰土壌では有機態リンが根圏で増加している一方で、非晶質鉱物に吸着しているリンは根圏で減少していた。一方、火山灰土壌では植物が利用可能な無機態リンが根圏で減少していた。ホスファターゼ活性や微生物バイオマスC,N,P濃度は、どちらの土壌でも根圏で高かった。細根有機酸分泌速度は非火山灰土壌で大きかった。 以上の結果から、同じ樹種(コナラ)で比較した際、火山灰土壌と非火山灰土壌でリン獲得様式は異なることが示唆された。全リン濃度の低い非火山灰土壌では樹木は有機酸分泌を積極的に行い、根圏の微生物活性やリン酸分解酵素の活性を高めて無機化されたリンを獲得し、さらにわずかに含まれる非晶質鉱物に吸着したリンも有機酸により直接獲得している可能性が示された。一方、全リン濃度の高い火山灰土壌では、非晶質鉱物に吸着したリンを積極的に利用しているわけではなく、利用しやすい形態のリンから優先的に利用している可能性が示された。 上記の野外調査と同時並行で、所属する山梨大学近隣の森林から昨秋にコナラ果実をシードトラップを用いて獲得し、栽培実験を開始した。有機態リンの多い土として森林表層土壌、無機態リンの多い土壌として園芸用鹿沼土を用いて栽培を行っている。
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