研究課題/領域番号 |
21K20596
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研究機関 | 地方独立行政法人北海道立総合研究機構 |
研究代表者 |
白根 ゆり 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 産業技術環境研究本部 エネルギー・環境・地質研究所, 研究職員 (50911054)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | ヒグマ / 農作物被害 / 栄養状態 / 食性 / 糞内容物分析 / DNA個体識別 |
研究実績の概要 |
本研究では、農作物利用の有無によってヒグマの栄養状態の季節変化パターンがどのように異なるのかを明らかにし、農作物被害および生息密度の増加を助長する要因を解明することを目的とする。農地周辺と森林の2地域を対象として、ヒグマの糞・体毛試料によるDNA個体識別や画像による栄養状態評価等を実施し、農作物利用の有無がヒグマの栄養状態に与える影響を調べる。2021年度は、1)自動撮影カメラを用いた栄養状態評価手法を検討すること、2)農作物利用個体のDNA個体識別情報を収集することを目的として調査を実施した。 1)では、農地周辺において8~10月にヘアトラップを設置し、併設した自動撮影カメラにより34回のヒグマの訪問を記録した。このうち、6回についてはヒグマを真横から撮影することができ、栄養状態評価指標として胴高-胴長比を算出することができた。胴高-胴長比の算出に供試できる画像をより多く得るためには、自動撮影カメラの設置台数を増やすことで、様々な角度からヒグマを撮影することが必要であることが示唆された。また、34回中24回についてはヒグマの腹部と大腿部を撮影することができ、皮下脂肪の沈着状態に基づいた肥満度判定を実施することができた。この手法は、胴高-胴長比の算出よりも汎用性が高いため、自動撮影カメラの画像に適していると考えられる。 2)では、ヘアトラップから採取した体毛試料や農作物被害現場において採取した糞・体毛試料等、計49サンプルのマイクロサテライト多型解析を実施し、8個体(メス1、オス7)を識別した。このうち2個体については、1)により胴高-胴長比の算出および肥満度判定を実施することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
農地周辺における野外調査および採取した試料のDNA分析をおおむね予定通り実施することができた。ただし、栄養状態評価に使用できる画像数が少なかったため、2022年度は自動撮影カメラの設置台数を増やす。また、ヘアトラップにおける体毛試料の採取効率が低かったため、ヘアトラップ構造を改良する予定である。森林地域については、2021年度に予定していた場所での調査を実施できなかったため、進捗に遅れが出た。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度に農地周辺で行った野外調査について、期間を延長するとともに、ヘアトラップ構造を改良し、自動撮影カメラの設置台数を増やして実施する。森林地域については、当初の予定から調査地を変更して、糞・体毛試料を用いたDNA個体識別、糞内容物分析による食性解析、自動撮影カメラによる栄養状態評価を進める計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度に予定していた森林地域での調査を実施できなかったため、旅費およびヘアトラップ資材等の物品費が発生せず、次年度使用額が生じた。2022年度に、ヘアトラップ構造の改良や自動撮影カメラの増設にかかる費用として使用する予定である。
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